爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「府県制と道州制」小森治夫著

道州制」という言葉は時折流れているようですが、ほとんどそれに向けた動きもなく、たまに「九州の州都は熊本に」などという話がご当地熊本には出るものの、何言ってるんだろうねといった程度の感想しか持てませんでした。

 

道州制を導入というところで問題としているのは「府県制」です。

実は府県の役割というものも良くは分かっていませんでした。

この本の著者の小森さんは大学卒業後すぐに京都府庁に入り、その後大学に移って研究を続けられたという、地方行政の専門家ということです。

本書では、これまでの府県制と、それに代えようとしての道州制について、歴史的な経緯と現状を解説するものです。

(なお、現在は「都道府県制」というべきでしょうが、本書では「府県制」と表記されています。)

 

最小の地方自治体である、市町村はこれまでに3回の大きな合併の波があり、その数は激減しましたが、府県は明治初年の廃藩置県直後には多かったもののそれからすぐに現在の規模になり、それ以降はほとんど動きはありません。

 

ただし、戦前においては府県というものは国の地方管轄の制度の中間機構として、国の内務大臣と市町村の間に立ち、国の官吏である知事が市町村を統率するというものでした。

 

しかし、第2次大戦敗戦後、GHQの命令で地方自治の独立が図られ、シャウプ勧告、神戸勧告として地方自治の抜本的な改革が図られたものの、その直後に「逆コース」という動きが強まり、結局は中途半端なものとなってしまいました。

その結果、国の事業の事務配分を受け、また教育と警察は府県の担当となりました。

 

府県の財政では、支出の大きなものは教員・警官の人件費と土木費であり、収入は独自のものは少なく国からの配分にかかっています。

これは、府県の仕事が国の機関委任事務が多かったためともいえますが、それが1980年代以降減らされるとともに補助金も減らされることになりました。

 

さらに、近年は「三位一体の改革」と言われて地方交付税交付金補助金が大幅に削減されたものの、府県への税源移譲はほとんど進まないということになっています。

 

 

一方、道州制ですが、これ自体は戦前から民間から主張されることがあったようです。

経済界からは効率化を求めて広域行政の利点を言われることが多かったのですが、国などの官僚はそれを認めることはなく立ち消えになってしまいます。

戦後になってもやはり経済界からの提言が相次ぐのですが、官界はまともに取り合おうとはしていないようです。

 

しかし、平成に入り大規模な市町村合併も進んだことにより、都道府県の事務というものが空洞化する可能性が強くなりました。

また、地方分権化を進めるためにも、受け皿を強化するには現在の府県では弱いと見られます。

国の出先機関と統合できる母体として道州が使えれば重複行政を防ぐことができます。

 

とは言っても、このような進め方をしようとしても権限を失う中央官庁の抵抗は強く、実現は難しいものと言えます。

 

 

府県制と道州制

府県制と道州制

 

 

まあ、現状の都道府県制についての理解も乏しいのですから、あまり良く分からなかったというのが本音です。

とにかく、中央官庁が抵抗勢力ということだけは分かりました。