この書評欄は一応読了したものだけを書いていますが、この本はあまりのアクの強さに途中で断念しました。
しかし、その事実だけでも残しておこうと書き記してみます。
なお、著者の藤井聡さんは土木学者ですが、国土計画などにも深く関与し、その著書も以前に読みました。
その時も、国土強靭化という目的の確かさは伝わったものの、国家財政のバランスなどまったく考えずにすべて注ぎ込めと言わんばかりの論旨にちょっとたじろぐほどの感覚を覚えました。
この本もまったく同様のものです。
本書の論旨を一言で言えば、土木建築の公共投資に何が何でも邁進すべし。です。
それに反対する勢力を罵っているというものです。
そのために、昨今目立ちすぎるほど目立っている「維新」「改革」を挙げ、それを論破するといった形式を取っています。
(図書館で本書を手に取ったのも、その題名にひかれてのものです。引っかかった)
私も「構造改革」とか「規制緩和」といったものには大いなる疑問を持っています。そのために、そういった点を解説されているものかと錯覚してしまったのでした。
しかし、全然違った。
本書は、元筑波大学副学長の宍戸駿一郎氏、元国土庁事務次官の下河辺淳氏、元衆議院議員で労働大臣等を歴任した小里貞利氏との対談に、著者の解説を付け加える形で構成されています。
まあ、色々味付けはされていますが、上記の主張を彩るという目的だけのために使われているようです。
著者はとにかく、公共事業を基に経済成長を求めるという立場であることを隠しもしません。
それに対する勢力は、
1,財務省を中心とした緊縮財政派
2,自由放任と小さい政府を是とする新自由主義者
3,日本財布論を標榜するウォール街
4,日本経済を脅威とするアメリカ政府
5,公共事業そのものを悪と見なす国内マスメディア
といった面々であり、彼らを批判しようというものになっています。
まあ、種々雑多な人々で、彼らも自分たちがまとめて批判されるとは思ってもみないことでしょう。
そして、どうやら経済成長云々もそれが第一目標ということではないようで、とにかく「土木公共事業に投資」することだけが真意というように見えます。
一応、誰もが否定出来ないはずの「経済成長」を表に出しておけばあとの土木事業礼賛にも乗ってくれるのではないかという構成のようです。
しかし、「経済成長否定派」の私から見ると、そのカラクリも明白ですので他の部分の妖しさも見分けやすいというものでした。
まあこんな本買う人も居ないとは思いますが。