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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「渡辺治の 政治学入門」渡辺治著

読書記録 政治経済

政治学者で一橋大学名誉教授の渡辺さんが、大学定年直後から日本教職員組合の雑誌「クレスコ」に政治学の解説という形で連載された2010年から2012年までの22回の「政治学入門」をまとめたものです。

 

ちょうどその時の政治状況を詳しく解説するというものなので、時間が経つにつれ状況が大きく変化するということもあり、一回の講座にあとから「その後」という付記が付くこともあり、それを編集したものとなっています。

 

2010年からの3年間という時期はちょうど民主党政権の最初から最後までとほぼおなじであり、それがこの講座の主な対象にもなっています。

しかし、民主党政権といってもその性格は正反対というほどに変わってしまったものであり、それを取りまく状況も分析のし甲斐があるものになっています。

 

民主党政権には多くの人が期待を抱き、それが裏切られたことで今のような安倍独裁政権の到来を促したとも言えるのですが、それの要因がどのようなものか、この詳しい解説が理解の助けになるかもしれません。

 

なお、小沢一郎という存在は他の論者では評価する者も居るのですが、この著者の渡辺さんは徹底的にお嫌いのようで、それが書きっぷりにも表れています。

 

自公政権が推し進めてきた、軍事大国化、新自由主義体制化への政策への反対が強まり成立した民主党政権ですが、その中には様々な勢力が含まれていました。

 

第一勢力民主党自民党と競い合う保守政党としようとした、新自由主義路線派であり、鳩山、菅の他、前原誠司、野田等がいました。

第二勢力は小沢などの利益誘導派です。

第三勢力は党内若手を中心に新自由主義や軍備増強路線に歯止めをかけようとしたマニフェスト実現派でした。

 

小沢一郎献金疑惑で退いたために代表の座が転がり込んだ鳩山ですが、首相になった直後には日米の密約を暴こうとしたり、労働者派遣法を改正しようとしたりと、新自由主義化、軍備増強に歯止めをかけようとする動きを見せました。

それらはほとんど些細なものとしか言えない程度でしたが、アメリカや日本財界、そしてマスコミにとっては大きな脅威となるものであり、彼らの猛反撃を浴びることになります。

 

結局、鳩山は退陣し菅直人に交代するのですが、新自由主義派といっても菅はすぐにその方向に回帰するというわけにはいきませんでした。

しかしその変節に反応した国民は参議院選挙で民主党大敗という結果を出します。

ここで菅退陣となってもおかしくなかったのですが、そこで小沢再登場となるのを嫌った財界などは菅続投を支持しました。

その後、3.11の大震災が起き政治休戦となったのですが、その対応のまずさや、財界の不満も高まり、菅退陣となりました。

 

その後登板した野田政権は消費税引き上げと一体改革という方策だけで、自民政権復活を果たしただけでした。

 

これらの政治情勢の中で、マスコミの果たす役割は非常に大きなものとなっています。

日本の政治にここまでマスコミの影響力が強くなったのには、大手マスコミがどれもほとんど同一の方向性を持つようになってしまったという側面が関係しそうです。

それは、マスコミの執行部・論説委員などがほぼ同一の「常識」を共有しているからです。

それは、「日本の発展のためには日米同盟強化と構造改革が必要」ということ。

これに反したかのような鳩山はマスコミ総攻撃を受けて潰されました。

 

二大政党制が良いものだという宣伝は根強くされていますが、90年代以降日本で唱えられてきたものの特徴は、一つは財界主導で唱えられたということ、そして当時は自民党中枢部にいた小沢一郎が主張したということです。

 

二大政党制というのは、実は保守の大枠では一致する二党が代わる代わる政権につくというものであり、財界や小沢の狙いもそこにあるというものです。

アメリカの民主共和の二大政党制というのもまさにこれが体現したものです。

日本では以前は自民党の一党政権が長く続きましたが、これも党内に多くの派閥を抱えて擬似的な複数政党であったということです。

それが弱まってきたためにもう一つの保守政党を作ろうとしたのが民主党でした。

 

なお、本書執筆の当時は大阪維新橋下徹がもっとも勢いがあった頃でした。

最後の方には橋下現象を読み解くと題した章が置かれています。

 

民主党政権には自公政権構造改革路線に反対する国民と、逆に自公政権では地方の公共事業・利益誘導が進まなくなったことに対して不満のあった国民の両方が期待を寄せました。

しかし、当然ながらその双方ともに民主党政権には失望し離れてしまいました。

その人々が次に期待を寄せたのが橋下徹だということです。

 

橋下はしかしその主張がほとんど新自由主義者と同一です。構造改革と称した大企業本位の世界秩序増強を求めています。

ただし、その中に原発停止や消費税反対というものを入れ込むことにより、構造改革反対の国民支持も取り付けようとしていました。

 

渡辺治の政治学入門

渡辺治の政治学入門

 

 

橋下徹分析は面白いものでした。現在ではそれに代わり小池百合子旋風が吹き荒れています。渡辺さんが小池都知事をどのように見ているか、読んでみたいものです。