独裁者といえば現代でも北朝鮮の金正恩などが思い浮かべられますが、先進国ではあまり縁がないようにも感じます。
しかし、世界的に見ればこのような独裁者というものは決して珍しい存在ではなく、まだ多くの国がそういった政治指導者により支配されているとも言える状況です。
この本はそういった独裁者と言われる支配者について、国際政治学者の著者が紹介しています。
取り上げられているのは、米紙ワシントン・ポストから出版されている週刊誌「パレード」が2011年に「世界最悪の独裁者ランキング20」として選んだ20人の中から、既に失脚したエジプトのムバラクと、選考に疑問があると著者が考えるキューバのラウル・カストロを除き、著者の独断でベネズエラのチャベスとロシアのプーチンを加えたということです。
なお、この本で取り上げた2011年から6年経過し、金正日は死亡して交代、中国の胡錦濤は習近平に交代、そしてカダフィは失脚といった変化もありますが、いまだにしぶとく独裁制を続けている国も多いようです。
独裁体制を築く方法はいくつかあるようですが、革命や独立で国を立ち上げた功労者がそのまま独裁体制を築き上げるというのが分かりやすいもので、ジンバブエのムガベ大統領が典型的なもののようです。
また、そのような創業者から継承して(あるいは簒奪して)独裁者になったのが金正日やサウジアラビアのアブドラービンアブドルアジーズ、トルクメニスタンのベルディムハメドフなど。
そして集団指導体制や政党制の中から独裁制を築き上げた、中国の胡錦濤やロシアのプーチン、イランのハメネイという連中。
いずれも非常事態を口実に国民の権利制限、報道の圧迫、反対派の弾圧などの手法で独裁体制を強化していくという道をたどります。
これに対して、世界各国も独裁体制であるというだけで批判するということもなく、その国に利用価値がある限りは独裁制も認めているようです。
アメリカなども民主制をうたう割にはその国の立場が有利に利用できる限りは独裁国家と言えど支持するという行動をずっと取ってきています。
中国ロシアはその国自体も独裁制と言えるものですが、当然ながら有利でありさえすれば独裁国家を利用するということを常に行っています。
このような状況ではその国の国民、特に反対する人々やジャーナリストといった人への弾圧は止まるはずもないものでしょう。
自由と民主主義などというものは世界のごく一部だけでのものと言うことなのでしょう。