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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

微生物の話 第9回(一応最終回) Lactobacillus plantarum

気ままなエッセイ 生物

微生物の話 第9回 Lactobacillus plantarum (ラクトバチルス・プランタルム)

 

長年勤めていた仕事と微生物の関わりについて色々と書いてきましたが、これが多分最終回になります。

 

出向していた子会社からは1年で元の会社に戻りましたが、まったくの窓際職でぼちぼちとやっていました。

その部署でも持て余されているのが会社にもバレてしまったのか、さらに外部への出向の打診がありました。

 

今回はまったく会社とは関係のない北陸地方第3セクター、(といってもこれまでも色々書いているので明らかですが、石川県です)県関係の仕事をするところでした。

 

もう会社に居ても仕方ないし定年までの間少し外の世界も見てみるかと思って行ったのが間違いでした。

 

行った先での仕事というのは、当時実施されていた文科省からの補助金研究で、産学官連携の事業のコーディネートをするというものでした。

たまたま、その石川県での事業展開が北陸独特の発酵食品の中での乳酸菌の動向と、その乳酸菌の健康効果の解明、さらに健康食品の開発というところを、石川県内の大学、企業、県関係の工業試験場や水産試験所等で連携して実施するということになっており、それのコーディネーターとしての赴任でした。

 

微生物関係の仕事ということで話が来たのですが、自分は自分自身で研究や製造をするのがこれまでの経験であり、他人の仕事を調整するなどということはまったくやったこともなく、その点では完全に間違った仕事の選択でした。

 

北陸では数多くの伝統的発酵食品が作られており、かぶら寿し、イシル、フグの卵巣のぬか漬け、こんか漬け等々、特色のある食品が現在でも盛んに生産されています。

これらの発酵食品はどれも乳酸発酵に関係する(全てではない)というのが特徴です。

ただし、伝統技術であるためにその詳細は解明されておらず、技術的にもやや不安定な要素もあったようです。

 

また、清酒製造も盛んですが当地の清酒は「山廃もと」製造法という伝統的手法によって作られているという、全国的に見ても珍しい特色があります。

実はこの「山廃もと」製造法というのは、大学での醸造学講義では聞いたことがあったのですが、まだ実際に行われているとは、そこに行くまで知りませんでした。

その味も精妙な味わいを持ち伝統文化というに相応しいものでした。

 

この項の表題とした「Lactobacillus plantarum」という微生物は、この中でも「かぶら寿し」の乳酸発酵に関わるものです。

かぶら寿司というのは、北陸地方以外の方には馴染みが薄いかもしれませんが、金沢地方では冬場に作られ正月などにごちそうとして食べられる、ブリの切身を蕪ではさみこんでしばらく漬け込んだというものです。

ここから分離されたこの乳酸菌は他地方の漬物などからも分離されることがあるもので、よく「植物性乳酸菌」などとして紹介されることがあるものです。

特にこの事業で分離されたこの菌は薬理活性もあるのではないかと言う実験結果も出て期待をされるものでした。

 

このプロジェクトリーダーをされていた大学教授のすぐそばに事務所を構え、いろいろと連携を取りながら進めていったのですが、まあこういったプロジェクトというのはどこも補助金が目当てでそれほど本気で進めようという意欲があることも少なく、あまりやりがいのあるというものではありませんでした。

 

さらに、初めての雪国の生活には参りました。

着任したのは夏で、しばらくは熊本とは違って涼しい気候に喜んでいたのですが、雪が降り出すととんでもない所に来たということに気づきました。

雪の降り出す前にすべり止め付きの短靴を準備していたのですが、すぐにそんなものでは足りないことに気付かされ、膝くらいまで積もった雪の中を長靴を買いに靴屋まで歩いていったのが悪夢の始まりでした。

 

スタッドレスタイヤを履いての車の運転も初の体験でしたが、これは意外なほどスムーズなのには驚きました。しかし、そのうち調子に乗ってスピードを出しすぎ信号の変わり目に急ブレーキをかけたらまったく止まらずに滑って交差点の真ん中まで出てしまうという怖ろしい体験もしました。

 

一番苦しんだのは、寒さと湿気で血流が悪化し、目の動きが悪くなって車の運転にも支障が出るほどになったことです。毎日車で走らなければならない仕事でしたので、それがもっとも辛かった事態でした。

 

そんな状況で予定の事業期間が終了し、会社に戻れるかと思ったらなんと会社からの早期退職のオススメ、まだもう少し仕事をしたいという希望があったのですが、仕方なく受け入れて熊本の家に戻り、現在に至る。ということになりました。

 

あの雪の北陸は思い出すのも嫌なほどですが、雪が溶けて一斉に花が咲きだす春の景色はなかなか見事なものでした。まあ、いい経験をしたと言えるのかもしれません。