爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「道元と曹洞宗がわかる本」大法輪閣編集部

大法輪閣とは仏教関連の本を出版している出版社で、宗派には関係ないということです。

その発行している月刊誌「大法輪」で2002年から2012年までに掲載された「道元の生涯と教え」「曹洞宗とは」というシリーズの連載をまとめ、さらに執筆者が加筆して単行本としたもので、多数の執筆者は曹洞宗僧侶や駒沢大学教授などさまざまです。

 

日本の曹洞宗の始祖の道元は1200年、鎌倉時代の初期に村上源氏の流れの内大臣久我通親を父、藤原一族の松殿基房の娘を母として産まれました。

幼い頃から聡明でしたが、8歳の時に母を亡くしその無常感から出家を志し、元服を前に僧門に入りました。

しかし比叡山で修行しても、諸国に師を求めて訪ねても疑問は解決できず、宋の国に渡り禅宗を学びます。

禅宗も多くの宗派がありその中で真の師を求めて各地を歩いたのですが、ようやく曹洞宗の長翁如浄にめぐりあい只管打坐の修行で悟りをひらいたそうです。

 

日本に帰国して布教を始めるのですが、他宗派からの迫害は激しく京都を離れて越前に永平寺を開くこととなります。

 

禅宗の中でも日本では臨済宗曹洞宗が並び立っていますが、臨済宗は「看話禅」、曹洞宗は「黙照禅」といいその性格はかなり異なるようです。

臨済宗では公案というかつての禅師の言葉や行動を題材に考えるということを重視しますが、曹洞宗は座禅を最重要としてその実践のみを求めます。

道元はこの座禅重視、只管打坐というものを宋の如浄より受け継ぎ自らの教えとしました。

 

道元はしかしその教えについての書物正法眼蔵」を残しています。

百巻の書を書くつもりだったのですが、途中で生命が尽き未完となりました。

 

後半部分は曹洞宗という宗派の歴史、現在、教えの特徴や葬儀、法事等のしきたりまで詳しく書かれています。

曹洞宗は本来は坐禅修行を中心としたものであるはずですが、江戸時代にすべての人を各寺社の檀家とする制度が徹底されたために、現在でも全国的には浄土真宗とならんで多くの寺院と檀家を有するということになっています。

そのために、他の宗派同様に、葬儀、法事、先祖供養といった行事を司ることが中心となってしまいました。

しかし、曹洞宗の教えのポイントとしては、釈迦より歴代の祖師に伝えられた「正伝の仏法」を守るということを拠り所とするということです。

 

また、歴史的に見れば永平寺総持寺の両本山体制というものは、ある時期には分裂の危機も迎えたことがあったそうです。

 

中国にももともと曹洞宗という禅宗宗派があり、それを学んだ道元が日本で立ち上げたのが日本の曹洞宗ですが、その教えには若干の違いがあるようです。

 

葬儀・法事の現状については、我が家が曹洞宗檀家であったこともあり、むかしから馴染んだ式次第が解説されており興味深くも懐かしいものでした。

曹洞宗ではもともと在家信者の葬儀の方法を持たなかったために、在家の死者もすべて僧侶が亡くなった際の葬儀法に従うために、まず死者に対して仏戒を授け血脈を付与し僧侶としての資格を与えてから葬儀をするという意味があるそうです。

この辺は、初めて知ったことでこれまでの疑問が解けました。

 

お経もこれまでは色即是空の般若心経のイメージが強かったのですが、他にも修証義や懺悔文といったお経が重要だそうです。

 

知ると知らないとではえらい違いと感じました。

 

道元と曹洞宗がわかる本

道元と曹洞宗がわかる本