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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”心理テスト”はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た」村上宣寛著

著者は心理学の研究者で、ご専門は認知心理学、性格測定といった分野だそうですが、コンピュータが世に出だした頃からそれを使ったデータ分析といったところにも手を広げたためか、行きがかりでロールシャッハ・テストの解析プログラムといったものをパソコン用にBasicで作ったそうです。

 

(Basicなんて言っても分からない人が多いかも。プログラミング言語で1行ずつ入力していくという大変なものでした)

 

その当時はロールシャッハを特に研究対象とはしていなかったので、専門書を読みながら解析プログラムだけを作るつもりで作成したのですが、その過程でロールシャッハテスト自体を見ていくと、それがあまりにも根拠なしに言いっ放しに近いものであるのに驚いたそうです。

 

ロールシャッハは普通の性格テストなどには使われずに犯罪者の心理分析などに使われているようです。

また、谷田部ギルフォートテスト、内田クレペリンテストといったものはいまだに(本書執筆当時、現在はどうでしょう)就職の採用試験などで使われることがあるものですが、著者が心理学的な考証を加えるとあまりにもいい加減な作りに驚くばかりだそうです。

 

本書では、他に「血液型人間学」というあまりにも広がっていながらまったく根拠のない性格判断テストと言ったものも取り上げながら、性格という複雑で微妙なものを取り扱って、かなり曖昧なまま採用試験などという重要な場面で使われている心理テストというものを厳しく批判しています。

 

血液型というものは20世紀初頭に発見されました。

血液というものは生命の源でありその性質は当然人間の性格にも影響があるはずという信仰はヨーロッパにもありましたが、ABO式血液型と性格を結びつけたのは日本の古川竹二です。1927年に心理学研究に発表されました。

しかしその論拠はほとんど科学的な視点を欠いた粗雑なものでほとんど相手にもされなかったものです。

しかし、1970年代になって能見正比古によって復活され大々的に紹介されることとなりました。

ただし、その手法は古川同様に科学的といえないもので都合の良いところだけを取り上げて面白おかしく文章を書いただけのものでした。

 

これにマスコミや企業も便乗して変な番組を作ったり人事配置に血液型を使うというおかしな会社ができたりといった風潮がうまれました。

 

このからくりには「バーナム効果」というものが関わっています。

血液型と性格の関係を語る文章を見ると、どの血液型の人でも当てはまってしまう(あるいは当てはまらない)ような質問が多いことが分かります。肯定率(あるいは否定率)が7割を越えるような質問というものは性格分類には役に立ちません。

しかし、A型の人はA型の文しか読まないために気づかないまま当たったと喜ぶというものです。

このような心理テストの傾向は他のテストにも見られるもので、これをアメリカの心理学者ミールが「バーナム効果」と名付けました。

バーナムとはかつてのアメリカの興行師で、詐欺まがいの興行で儲けた人です。それを同じようなものだということでしょう。

 

ロールシャッハはスイスに19世紀末に産まれました。

子供の頃にインクのシミで遊ぶのが好きだったのですが、精神病院に就職したときにそのシミが精神診断に使えると考えるようになりました。

ロールシャッハが作ったシミの図版は40枚ほどですが、そのうちの15枚が今でも使われているそうです。

ロールシャッハはそのシミ図版を使って正常者117名、精神分裂患者188名、その他の精神障害者100名に何に見えるかを聞きました。

そしてその反応、つまり「反応数はどれくらいか、反応時間はどれくらいか、図版に対する拒否反応はあるか、等々」を記録しました。

しかし、ロールシャッハはその後まもなく病気で亡くなったために詳しい解析は残しませんでした。

その後、多くの研究者によりそのシミ図版を使った心理解析が研究されました。

 

ロールシャッハテストの実施の実態というのは、実施者の一方的な解釈だけで成り立っているようです。1984年に当時の同法のエキスパートを集めて実施したテストでは、それぞれのエキスパートたちの勝手な解釈のオンパレードであることが明らかでした。

そして、こういったテストはまずいと思ったのか、以降はこのような公開テストは実施されなくなりました。相変わらず今でも勝手な解釈のテストがはびこっているようです。

 

谷田部ギルフォード性格検査というのは、1940年代にギルファドとマーチンという人が作った性格検査の質問項目があったのですが、1954年にその中の240項目を選んで京都大学の谷田部が翻訳したのが旧YG検査、さらに1957年に関西大学の辻岡が120項目に簡略したのがYGテストということです。

これは「いろいろな人と知り合いになるのが楽しみである」といったような質問に「はい」「?」「いいえ」で答えさせるというもので、一見したところ性格が現れるような気になりますが、実際はその項目ごとに数値化して集計しその値で判定するという、何がなんだかわからないようなことになってしまうテストです。

テストを受けた人が建前を言っているのか、本音で答えたのかも確認する術がありません。

これで建設的発言をする、とか攻撃的発言をする、なんて判断されてもこまります。

その他、怪しいところばかりで、著者は「捏造、すり替え、ウソの大盤振る舞い」と評しています。

このようなものが、まだ採用試験などで使われることがあるようです。その場ではさらに本音など書くはずもないでしょう。

 

内田クレペリン検査というのは、数字が一列に並んでいるものをその隣り合った数字を足して下に書いていくという操作を延々と15分を2回続けるというものです。

これは単に計算能力を見ているだけのようですが、実は作業量と作業水準が時間とともに変化するかどうかを見て心理的な安定性を判断するというものです。

したがって、最初から飛ばしすぎて疲れてペースが落ちると不安定と判定されますので、このテストを受ける気構えは「最初はゆっくりと書く」だそうです。

その程度のテストですので、その結果の判定も大したものではありません。

せいぜい、よほど計算能力の無い人が分かるというくらいのものです。

しかし、このテストもいまだに採用試験で使っているところがあるそうです。

そういった組織の人事部門のあまりにも不勉強ぶりを表しているだけだということです。

 

私も、そう言えば就職試験などの時に何やらこのような心理テストのようなものを受けたような覚えもあります。ああいった会社の人事担当は不勉強でいい加減だったのだということが今になってわかりました。

 

「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た

「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た