「新書漢文大系」とは、「新釈漢文大系」というシリーズを作成した明治書院が新書版でその簡易版を出版したものです。
漢文そのままではなく、書き下ろし文という読み下した文を説明文を並べて掲載し漢文の口調とその意味をつかめるようになっています。
「戦国策」とは中国の周時代末期、各地の大国が統一を目指して戦乱に明け暮れた時代のエピソードをまとめたもので、その話自体のもともとの著作者は数多くいるのでしょうが、前漢の劉向が編者とされています。
数々の有名な説話を含んでおり、現代まで使われているような故事成語の元となったものも見られます。
エピソードの中には史記などの歴史書にも含まれているものもありますが、こちらが発祥といえるかもしれません。
曽参人を殺す
曽参(孔子の弟子)の母親に曽参が人を殺したと告げたものがあったが、母は信じなかった。しかし、それが度重なり3人目になると信じてしまった。
同姓同名の曽参が殺人事件を起こしたのだが、母であっても度重なると信じてしまう。
これは、秦の将軍甘茂が秦の武王に命ぜられて遠征に出かけるときに、ライバルが讒言をするかもしれないとして、武王にそれを信じないように念を押したもの。
百里を行くものは九十を半ばとす
秦の武王の驕りを諌めたもの。
蛇足
楚の将軍昭陽が斉に大勝したのにさらに攻め込もうとしたので、説客の陳シンが斉のために昭陽を説得して止めさせたもの。内容は有名なアレです。
まず隗よりより始めよ
燕の昭王が斉に痛めつけられ亡国寸前となった国を立て直すために諸国より人材を招聘し国力強化を目指したが、どうすれば有能なものたちを集められるかを顧問の郭隗に訪ねたところ、彼が答えたのがこの言葉。まず私に高給をくれればそれを聞いたもっと能力のあるものが集まるだろうという、考えてみれば実に自分に都合の良い話だが、これを行なって有名な樂毅などが燕に仕えるようになり、昭王の望みは果たされた。
郭隗の故事には思い出があり、昔会社に入ってすぐの頃に、会社から業績向上のためのアイディア募集ということがあったのですが、そこで「燕の郭隗の故事にならい、現在の社員の給料を上げて、より有能な社員が集まるようにしたらよい」と提案したことがありました。
郭隗の故事を人事部の連中が知らなかったのか、知ってても無視したのか、何も起きませんでしたが、若気の至りでした。
内容はこのように知っている事が多いのですが、それが漢文の読み下し文になっている点が面白い本で、音読するとその魅力も分かります。