爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「イタリア”ケルト”紀行」武部好伸著

著者の武部さんはエッセイストということですが、どうも”異様なほど”ケルト文化に興味をお持ちのようです。

ケルト人といえば古代ローマがヨーロッパの多くを制覇する以前には広く住んでいたのですが、その後は辺境に追いやられ現在ではアイルランドウェールズなどに残っている民族です。

しかし、各地に残っているケルト文化の痕跡を追って、著者は各地に旅をしては著書を書いており、もちろんフランスのブルターニュアイルランドウェールズの紀行も出版されています。

それで行き着いたところが、ローマ帝国の本拠地イタリアでした。

 

歴史的にはローマがまだ発展する以前の紀元前400年頃にはイタリアに侵入したケルト人が住んでいたようです。

ボローニャという町も元々はケルト人の中の「ボイイ族」が最初に住んだところで、「ボイイの町」から来ているそうです。

その後、ローマが力をつけるに従って押しやられ、紀元前191年のボローニャの戦いで打ち破ってほぼ完全に国としては壊滅しました。

アルプスを越えて逃れたか、ローマに同化したようです。

 

それにしても、その後のローマ時代の遺跡が多数残っている、というかほとんどがそればかりのイタリア国内で、ケルトの遺物を探そうというのも驚くべき探究心です。

 

イタリアのケルトの痕跡はさすがに北部に限られていますので、著者夫妻はトリノにまず入ってからアルプス沿いに東へ向かい、最後にはスロヴェニアクロアチアとの境に近いゴリツィアとトリエステにまで及んでいます。

しかし、どの地でもさすがにケルト文化の遺物というものはほとんど出会えず、わずかに博物館の中に数点残っているという状況のようです。

 

さらに、そのような片隅の博物館では展示物の説明も英語がなくイタリア語だけという場合も多く、イタリア語がわからない著者ははっきりと中味がつかめないまま終わるというところもあったようです。

 

それだけ苦労をしてもケルト文化の痕跡に出会いに出かけるという著者の姿勢には敬意を表しますが、ちょっとやり過ぎではと感じてしまいます。

しかし、その旅行にちゃんとついて行くという奥さんにも感心します。