爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「知らずに他人を傷つける人たち モラル・ハラスメントという大人のいじめ」香山リカ著

各種ハラスメント、セクハラ、パワハラ、マタハラなどが世間を賑わせていますが、最も身近なところでも起きているかもしれないのが、「モラハラ」(モラル・ハラスメント)です。

 

その定義は「ことばや態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のことである」そうです。

セクハラなどが職場や地域社会が舞台であることが多いのに対し、モラハラでは家庭内、そして職場でも上下関係とは関係ないところでの発生が多いようです。

 

そういったところでは、これまでは「夫唱婦随」や「カミナリオヤジ」といった感覚で、あまり問題視されていなかったということもあり、このハラスメントが人権問題であるという事実がそれほどは意識されてこなかったという事情がありそうです。

 

職場のモラハラというものは、加害者が上司の場合はパワハラと重なる部分もあり、また異性であればセクハラになる場合もあります。

しかし、パワハラと異なる点は「上司であっても相手をどうにでもできるとは考えていない」ということのようです。にも関わらず陰湿ないじめをしてしまうという点がモラハラの特色です。

 

また、部下の側からのモラハラには「怠業型」というものがあり、やる気がなく仕事ができなくなるというものですが、そこには「30代うつ病」というものが絡んできます。

これは、仕事を始めるとうつ病が発症するが、家に帰ると普段通りというものです。

これが発生すると上司は対応することが難しく、病欠していても家では遊び歩くということも出てきて、他の社員からの不満も続出し、上司の方が完全なうつ状態に追い込まれるということにもなるそうです。

 

家庭内、夫婦でのモラハラは今までは圧倒的に夫側からのものが多かったのですが、妻は何があっても夫に付いて行くという道徳観があるために、なかなかモラハラの被害者であるという認識になりにくいようです。

こういった日本型のモラハラとでも言うべきものは、欧米型のような強力な物ではないにしても妻の被害は大きかったのですが、夫妻双方ともにコミュニケーション能力が低く、対人関係構築が上手くできないということが原因となるようです。

 

これを防ぐためには、より相手を理解し豊かなコミュニケーションを取っていくという関係にしていくという努力が必要となるということです。