小泉純一郎元首相が原発ゼロという発言をし、ちょうど東京都知事選があった時に細川護熙元首相が原発廃止を掲げて立候補した際にはその応援をしたということがありました。
都知事選は2014年2月だったのですが、小泉元首相の原発ゼロ発言はその少し前であり、2013年8月に毎日新聞に最初に掲載されたそうです。
それが数々の問題を撒き散らしたのですが、これを池上彰さんが2014年1月という都知事選の直前に本にまとめたものです。
この本の構成は、小泉元首相のそれまでの発言の経緯、そして毎日新聞で最初に記事にした山田孝男毎日新聞編集委員との池上さんの対談、さらにインタビューを細川護熙氏、反原発を明確に表明した城南信用金庫理事長の吉原毅氏、元三菱銀行取締役の末吉竹二郎氏にしています。
2013年8月の最初の発言以降、元首相ということもあり自民党内からの反響も大きく、安倍首相を始めとして閣僚からの発言も相次ぎました。
それ以降の政府の動きというものはその発言には影響されず原発再稼働に向けて進んでいます。
小泉氏の発言の裏には故人になりましたが慶応大学名誉教授の加藤寛氏の思想の影響があるという指摘です。
この本の出版時にはまだ盛り上がりのあった反原発運動でした。しかしその後はすっかり力を失ってしまったようです。
福島の農産物などには放射能の影響はほとんど無くなったというのも事実ですが、福島原発の放射能封じ込めができないというのも間違いありません。
原発を廃止に向かわせるのか、さらに安全性を強めて使い続けるのか、その方針を決めることすらしようとせずに、ずるずるとなし崩しに続けているのが政権の態度であり、それを問題ともしないのが国民の態度です。
あまりにも思考力の粘性がないのが日本人の特性でしょうが(おっと、日本人論をしてしまった)それで本当に良いのですかと聞かずにはいられない気持ちがします。