爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

NHKテレビ小説「とと姉ちゃん」で、「暮しの手帖」の商品試験描写

今期のNHKテレビ小説は、「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子さんをモデルにした「とと姉ちゃん」を放映しており、ややデフォルメが過ぎるのではないかという演出は気になりながらも毎朝見ています。

 

現在は、ドラマ中で「あなたの暮らし」とされている雑誌の人気記事の「商品試験」について、取り上げられて批判されていたメーカー側からの反論により新聞社主催の公開試験実施という局面に差し掛かっているところです。

 

当時(昭和30年頃・ちょうど私の産まれた時代です)はようやく戦争の傷跡も癒えつつあり、さまざまな商品の供給も増えてきたところですが、まだ品質という概念が乏しく、粗悪品が出回りそれによる被害も頻発といった様相でした。

 

それを問題視した主人公たちは使用者観点からの商品試験を実施し、それを雑誌で取り上げることで本の売上も伸ばしていったのですが、欠点を指摘されたメーカー側は相当な痛手を被ったところもあり、反発もあったようです。

 

現在のドラマの場面では、その試験方法の是非について公開の場で討議しようというところです。

 

この後の展開はまあ想像できる気もするのですが、ここで「試験の方法」について一言。

 

このような「商品試験」に限らず、実験をして結果を出すという場合には「試験方法」が最重要です。

実験系の科学論文などの構成でも、「序文」につづいて必ず「材料と方法(Material and Method)」が記載されます。

結果などを討論する前に、まず実験の材料と方法がその研究の目的に合致しているかどうかが判定されなければなりません。

 

商品試験などについては、現在ではかなりの程度まで公的試験の方法が確立していますが、昭和30年当時はそれも不備が多かったでしょう。

だからこそ、誰もが納得できるような方法でその試験が実施されたかどうかが最も問題となるところです。

 

ドラマの昨日の場面では、メーカー側は定められた公的試験方法とそれを補強する試験を実施していると主張したところです。主人公の雑誌側は「使用者側視点にたった実験方法を採用」と主張していくだろうと思いますが、これはまだ放映されていません。

 

実際の「暮しの手帖」でここら辺がどこまできちんと記述されていたかが不明ですが、万全を尽くす記述にするならば、まず試験方法の採用についての姿勢をきちんと記載し、公的試験方法と自分たちの観点からの試験方法についての比較検討をしておくべきだったでしょう。

もちろん、一般向け雑誌にこういったところまで書いておくことは無理がありますが、それを何らかの方法で示しておけば問題が起きることも少なかったのではないかと思います。

 

まあ、「後から見れば」なんとでも言えるという話で、当時の人々の努力は大変なものだったでしょうし、消費者視点からの評価ということを強く意識して確立していった「暮しの手帖」誌の業績というものは大きなものだったのでしょうが、少し「こうしていれば」という思いを持ったところでした。