故宮といえば中国の旧王朝時代の宮殿のことですが、それを中華民国成立以降は歴代王朝の財宝の博物館として使っていました。
その後、国共内戦の時に国民党が大陸内での戦闘で敗れ台湾に逃げる際にその多くを持ち去り作ったのが台北にある故宮博物院です。
また、北京のものもその後中華人民共和国側が博物館として維持しており、故宮博物院は現在は北京・台北に並立している状況です。
世界で大きな博物館といえば大英博物館やルーブルでしょうが、いずれも自国だけの品物ではなくギリシャローマやエジプトなどの発掘品を収蔵しており、故宮博物院は中国だけの物品で成立しているのとは大差があります。
本書は1996年にNHKがその両方の故宮博物院を取材してその至宝の数々を紹介する番組を作成したのですが、それを3巻の書籍として発行したうちの第1巻です。
第1巻では先史時代から殷周、春秋戦国時代、秦漢帝国時代までを扱っています。
両故宮博物院の収蔵品の写真ばかりでなく、様々な資料を入れ込んだ目で見ても楽しいものとなっています。
この時期の遺物の圧巻はやはり青銅器でしょう。
殷時代のものも残っていますが、その後も数多くの青銅器が作られ、その保存性の良さからさほど損傷を受けずに出土して保存されています。
かえってその後の鉄器や陶磁器が見る影もなく消えてしまっているのとは大きな差があります。
圧巻は西周時代(周王朝前期)の毛公鼎でしょう。台北の博物院にあります。
周の時代のものとしては最も長い500字の銘文が鋳込まれています。
実はこの本を購入したのは、実際に台湾に旅行し台北で故宮博物院を見た帰りの東京でした。
まだ目に強い印象を残した物をよく知っておきたいと思い本屋に寄ったのですが、あの時の感動を思い起こさせるものとなっています。
毛公鼎を始め数々の至宝を目にすることができたあの台湾訪問は大きな経験でした。
できればまた行ってみたいものですし、北京のものも見てみたいのですが難しいですね。