アメリカンドリームというものがまだあるのかどうか分かりませんが、誰でもやる気と才能さえあれば家柄や身分の違いなど無く成功できるという社会がアメリカというものであるということになっていました。
そのような成功者の物語はいくつも見ることができ、それを読むことでまたさらに挑戦者の夢をかきたてることにもなっています。
しかし、実は成功確率は3%(現在はもっと低い?)ということで、100人居れば97人は失敗するということです。
この本はそのような97人の失敗者の物語ということです。
ヨーロッパなどの旧世界では領地の維持などといった成長を求めない職に属するという行き方も立派な行為とも見なされていたのですが、アメリカという新世界ではとにかく前進してより大きな利益を得られるように挑戦するという生き方だけが認められ、それ以外の者は負け組とみなされるという風潮が、ごく初期の段階からずっと続いていたようです。
この本は特に19世紀を中心に、商売や投機などに参入しては破産という失敗(failureというのは「破産」という意味で使われるというのがアメリカです)に直面した人々の実情を描いています。
恐慌というと20世紀初頭の大恐慌が有名ですが、アメリカ社会では19世紀初頭から繰り返し恐慌に見舞われています。
こういった状況では、放漫経営などはしていなくても連鎖的に倒産、破産という事になってしまいます。
19世紀アメリカでは破産し負債返済の見込みが立たないと刑務所に収容されるという法律があったようで、そうなるとますます返済の方法は無くなります。これをめぐっての闘争もあったようです。
また、破産に際してはギリギリの状況での生き残り策もあり、詐欺的行為もあり厳しい経済闘争が繰り広げられます。
こういったことがアメリカでは普通だったのかもしれません。
先祖伝来の家業を守っていくなどといった旧世界での生き方はまったく重んじられず、とにかく事業を興し儲けを追求するというのが、アメリカでは長年に渡っての社会通念になってしまっているということが改めて確認できます。
そういった過剰な闘争心というのが今世界を揺り動かしているのかもしれません。
まったく、なんと厄介な国と国民が世界を引っ張っていってしまったんでしょうか。