世界の主要国ではどこも経済状況が沈滞しており、それを上向かせようとして様々な方策を実施しています。
日本ではまた懲りもせず巨額の国費投入による消費増大に頼るようで、将来のことなど何にも考えていない為政者を持つという不幸な状態になっています。
このブログの副題、「エネルギー文明論」では、これまでにも世界のほとんどを抑えてしまった現代文明は石油などのエネルギーに依存した「エネルギー依存文明」であるとみなしており、その動きの表現である経済というものもエネルギーの状況によって左右されていると考えて語ってきています。
ここでたいていの人(政府権力者を含む)が間違えているのは、現在は「経済状況が悪いからエネルギー消費も停滞している」と思っていることです。
実は「エネルギー消費が思うように増やせないから経済が上向かない」と考えるべきではないかと思います。
とはいえ、エネルギーの使用状況というものは世界各国において非常に違いがあり、よく言われているように日本では省エネも進み一人あたりのエネルギー消費量も少ないのに、アメリカなどは大量のエネルギーを浪費していると考えられています。
こういったところをエネルギーの専門家のまとめたものから引用させていただきます。
www7b.biglobe.ne.jp書かれたのは隅田さんとおっしゃる、日立製作所で長らくエネルギー関係の仕事をされた後、中部大学などで研究を続けられた方です。
それによると、2010年での各国の一人あたりエネルギー消費量(石油換算)は世界平均で1.9t/人、日本が3.9に対し、カナダやアメリカでは7以上となっています。
それでは、アメリカと比べて日本の経済状況は半分と言えるのでしょうか。
これはそうとは言えないでしょう。
エネルギー依存体質というのは国によって異なり、浪費する体質の国はそれなりに、省エネ体質の日本などはそれなりに経済とエネルギーが関連しており、絶対値は異なっていても好景気時のエネルギー消費と不景気時のそれはその国なりに比例しているのでしょう。
また、日本の例で見ればエネルギー消費量の推移とGDPとは見事に並行していることが分かります。
次の引用図を御覧ください。
上記の隅田さんのサイトにあった、資源エネルギー庁によるエネルギー統計のグラフです。
石油危機に至るまでのGDP推移とエネルギー消費量の推移は見事に並行していますが、石油危機の時期に消費エネルギーの伸びは無くなります。しかし、その間にもGDPは伸びているようです。
しかし、第2次石油危機が収束すると産業用エネルギー消費量は伸びなくても民生と運輸部門の伸びがGDPと比例するかのように伸びているために、総消費量もGDPと連動しているかのようです。
そして湾岸危機以降はGDPの伸びもゆるやかになる一方、エネルギー消費の伸びもほぼ無くなります。
石油ショック時のエネルギー消費停滞は供給低下によるものですが、その後の特に産業分野での消費量が伸びない要因は省エネルギー対策によるものと考えられます。
日本のエネルギー消費と経済成長を見た場合、省エネ努力といったものとの関係はどうなっているのでしょうか。
これには上記グラフを見ただけでも疑問が残ります。
「民生・運輸は省エネをしていないのか」ということです。自動車の燃費改善も進められていますし、家庭用の機器も相当省エネが進んでいるはずです。
それにもかかわらず、エネルギー消費量はどちらもかなり増加しています。
これを考えれば、「省エネによる効果」というよりは、日本経済の構造変化で民生需要が大きく増したからという理由によると考えた方があたっていそうです。
結局、省エネは延々と進められているものの、その効果は小さいもので「エネルギー消費を減らしていっても経済成長を成し遂げられる」という証拠は見られないようです。
そこで、上記の命題「経済成長とエネルギー消費量の増大は並行して起こる」ということが真実であるという可能性が増します。
問題は、現在はエネルギー消費量が思うように増やせない時代であるということです。
石油ピークが来ているのかどうかは別問題として、産油国の設備投資抑制などによるのかもしれませんが、とにかく石油供給は増えない。
シェール革命などと大々的に騒がれたものの、結局はその製造コストの増大のために思うように増やせるというものではない。
原子力発電もそのあまりの危険性のために撤退の動きが止まらない。
太陽光発電や風力発電も期待の割には設備改良の速度が遅く実用性に欠ける。
このように、エネルギー供給量拡大は難しい情勢です。
つまり、経済成長が始まろうとするとエネルギー価格は急騰しストップが掛かるという繰り返しになります。
これが経済成長が起きない原因かもしれません。
そこにいくら巨額の財政出動を行なっても効果は出ません。どうせまた利権あさりの連中の食い物になるだけでしょう。