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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「現代思想2016年6月臨時増刊 微生物の世界」青土社発行

青土社が発行している雑誌「現代思想」の6月増刊号ですが、テーマが「微生物の世界」ということですので、購入してみました。

 

現代思想の最近のテーマを見ても科学分野のものが結構多いようです。思想というものとは違うかとも思ったのですが、現代では不可分のものなんでしょうか。

 

微生物の世界というテーマですが、非常に広い範囲のものであり一書の中で色合いを統一できるようなものではなかったのでしょう。

まあバラバラです。

 

ウイルス学については山内一也さん(東京大学名誉教授)、菌類に関しては小川眞さん(元森林総研)、人体と微生物の共生については藤田紘一郎さん(東京医歯大名誉教授)と錚々たるメンバーが執筆されており、そのあたりの文章はコンパクトでありながらポイントを外さず、さらに新たな知見も込められているという面白いものでした。

 

また、広島大学教授の長沼毅さんの「微生物はなぜ小さいのか」という文章も大きいウイルスや小さいバクテリアの話など、あまり知られていない内容ではないかと思います。

 

ただし、その後の天然酵母パンの話などはかなり内容のレベルは降下してしまい、単に美味しいから良いじゃないという話になってしまっています。

 

まあそれでも中味の中で興味深い内容について少々触れておきます。

 

ウイルスというものは宿主が限定されている場合が多く、他の動物などでは増殖できない特性があります。

人間に特異的なウイルスとしては天然痘ウイルスや麻しんウイルスがありますが、こういったものは実は極めて新しい物のようです。

天然痘ウイルスはわずか4000年前に齧歯類と共生していたウイルスが変異して生まれたそうです。

麻疹ウイルスに至っては1000年前に牛の牛疫ウイルスから生まれたとか。

 

ウイルスは病気を起こすものばかりが注目されますが、安定的に共生するウイルスのほうが数が多く、人の染色体の中にも「ヒト内在性レトロウイルス」が約9%含まれていて人の体内の機能に多くの影響を与えているそうです。

 

生物が生まれた当初はその死骸を分解する菌の出現が遅れており、そのために生物体の有機物が分解せずに蓄積するということが起きたそうです。

樹木もリグニンを分解する担子菌類の出現が起きるまではそのまま地中に埋もれるばかりで、そのために石炭となったとか。ということは、分解菌が発達してからはもはや石炭の生成はなくなったということでしょう。

石油も同様の事情と思います。もはや化石燃料の再生は起きないということでしょう。

 

腸内細菌や寄生虫というものは、体内で栄養を摂りながら繁茂しているだけではなく、宿主に対して影響を及ぼすことがあるようです。

栄養を横取りして宿主を栄養不良にするということは考えやすいのですが、どうやら心理状態や行動様式にまで影響することもあるかもしれないということです。

トキソプラズマは人の脳組織に住み着くのですが、これに感染している人はその恐怖心が減少し、行動が大胆になるという研究結果があるそうです。

藤田紘一郎氏も感染しているそうです。その行動はもしかしたらトキソプラズマの為せる業なのかもしれません。

 

 バクテリアの大きさというものは、除菌フィルターの孔径(目の粗さ)とも関わるために問題なのですが、通常は0.0002mmのものを通過できないはずが、それを透過してしまうものが見つかっているそうです。

地下水にはこのような未知のバクテリアが多く居るようで、これをメタゲノム解析とクライオTEMを用いる研究で調べられているそうですが、これらの微生物はゲノムも小さく遺伝子が十分に揃っていないために他の微生物と補完しあっているとか。

面白い話があるものです。

 

ウイルスは通常はバクテリアより小さいものなんですが、大きなウイルスというものも見つかっています。

ミミウイルスというものが1992年に発見されたのですが、これが外径0.0004mmの球形で普通のバクテリアより大きかった。それよりさらに大きなメガウイルス、さらに大きいパンドラウイルスが発見されています。

これらは大きさだけでなくその遺伝子の構成も常識はずれということで、これからも様々なものが発見されるかもしれません。

 

最新の微生物学情報から遠ざかってしまった間にかなり面白い研究成果が出てきているようです。