格差といえばアメリカがひどいというイメージですが、イギリスでも相当なもののようです。
もちろん、以前から階級社会と言われていたイギリスですが、最近では他の国と同様に富裕者といえば金融関係や投資家で、昔のような貴族階級というわけではなさそうですが。
著者の2人はガーディアン紙のジャーナリストということで、イギリスの現状には詳しいようです。
本書は4部構成、1部は富裕者の現状、2部は貧困層、3部はその対策としての公共政策、4部はさらに税制として取るべき政策を扱います。
2009年の出版とのことで、まだ労働党政権であった時代ですが、本書の姿勢としては「労働党政権はよくやっているが、まだ取るべき政策は数多くある」というものです。
現在は保守党政権になっていますので、相当状況は異なっているだろうとは思います。
1部2部はほとんどアメリカや日本の状況かと思うほど似通ったものになっています。
面白いのは3部の取るべき政策についてのところからで、特に「貧困の相続」という問題を断ち切るための教育、就職といった面からの施策があれこれ取り組まれている(いた)ようです。
また、4部の税制対策には、イギリスでも慈善事業への富裕層の寄付というものは一般的であるものの、このような気まぐれな富者の慈善に頼ることはできないという、極めて当然の主張です。
また、租税回避を絶対に停めなければならないというこれまた正論が論じられています。
パナマ文書の公表という激震が走っていますが、当然ながら相当以前から問題視されているということでしょう。
アメリカのような完全無策というのではなく、イギリスでは少なくとも一部で対策はなされていたようです。日本はどうでしょうか。
格差是正ということは政権がやる気になれば相当のことができるのではないかと考えさせられます。やる気のない政権は換えること。それができるのは有権者の意識でしょう。