著者は大蔵省官僚から財務官まで勤め、現在はアジア開発銀行総裁という要職を歴任している人です。
本書は2007年にアメリカの日本大使館公使から戻る寸前に書かれたということで、アメリカではサブプライムローン問題が発覚した直後でした。
それがリーマン・ショックということにはまだ拡大していなかった時期でしょうか。
そのためか、現在進行形の危機というところまでは分析が進まず、今となってはやや楽観的に感じられるものもあります。
アメリカを始めとする世界各国で景気変動が小さくなり順調な成長を見せているのは構造的な要因があったためだ。などという気楽な論議ができたのもその頃だからこそでしょうか。
IT化の成果でアメリカ経済は順調であったということですが、その真価が問われるのは現在よりさらに後のことかもしれません。
もちろん当時もグローバル化と金融資本主義の広がりで格差拡大ということが問題にはなっています。しかし、その悪影響に対しても見方が甘いように感じるのは政権側の官僚であるためもあるのでしょうか。
そんなわけで、賞味期限がはるかに前に切れてしまった本でしたが、その当時の雰囲気が少しは判ったかもというものでした。