著者の藤田さんは戦争中に福島県の三春に疎開したのですが、その隣人の小父さんに沢山の昔話を聞かされて育ったそうです。
それを思い出しては本にまとめたというものです。
ここでは、頓智、機転といったものが話の中心になっているものを集めています。
昔話で頓智・機転を利かせるのは主に身分の低い庶民・作男・嫁・小僧といった人々です。
大人や主人など、権力を持つ人々からの圧力、理不尽な要求などを機転で逆転してしまうというのが爽快に聞こえたのでしょう。
昔話を語る人、聞く人もみな庶民だったでしょうからこのような筋の話を喜んだのかもしれません。
なお、話は著者が聞いたとおり福島県三春の言葉のまま書かれています。むずかしいところはカッコ書きで翻訳してありますが、かなり分かりにくいのは仕方のないものでしょう。
このような話はトルコの「ホジャ」話や大分の「吉四六話」など同様のものが多数あり、話の筋も似通ったものがあるようです。
実際に伝わった可能性もありますが、同時に各地で発生したかも知れません。
また、一話はせいぜい2,3ページのものばかりです。筋を書いていくともうそれだけで終わってしまいますので、紹介はしませんが、どこかで聞いたような気がするものが多いようです。
もうどこの地方でも昔話を実際に語れる人はほとんど居なくなってしまったのでしょうか。
実は当地熊本県八代地方にも「彦一とんちばなし」というものがあります。それを蒐集しまとめている方もいますが、実際に子供に話している人はもう居ないかもしれません。