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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「小国主義 日本の近代を読みなおす」田中彰著

読書記録 歴史 政治経済

明治維新後に当時の政府の主要メンバーを米英に派遣した岩倉使節団というものがあったということは歴史の知識として知っていましたが、その派遣報告「特命全権大使米欧回覧実記」というものを、本書著者は研究の対象としてきました。

 

その中には当時のイギリス・フランスやプロシアのような「大国」についてばかりではなく、ベルギーやオランダなどの「小国」についての報告も書かれていました。

明治初期の政府の方向性としては、必ずしも大国を目指す大国主義であったとは言えず、小国でも独立を守っていくという行き方も考えられていたようです。

 

しかし、その後の日清戦争での勝利と多額の賠償金獲得で大国化という方向性に取り憑かれ、その後の日露戦争では1円の賠償金も取れなかったにも関わらずさらに植民地拡大、軍備増強という大国主義に邁進してしまいました。

 

政府のそのような方針に対し、小国主義とも言うべき国の行き方を提唱した人々も居ました。

植木枝盛中江兆民といった土佐出身の思想家もそうですし、その後の大正デモクラシーの中で論説を発表していた、今では無名となってしまっている三浦銕太朗という静岡出身の思想家も注目すべき論説を行なっていました。

 

同時期には石橋湛山小日本主義の議論をしており、朝鮮や満州などの植民地を運営してもその費用の方が得られる利益よりはるかに多く植民地放棄した方が良いといった論を発表しています。

しかし、対外膨張の政府・軍部に聞く耳はなく戦争への道をたどりました。

 

第二次大戦敗戦後は小国主義に立ち戻るチャンスだったようです。

アメリカ主導ということで論議をされている日本国憲法もその多くの文章が日本の小国主義者が発表した憲法案に相似しているそうです。

しかし、その後の経済発展でまた方向を間違えてしまったようです。

 

経済大国、政治大国となりたいというのは指導者層にとっては魅力的なものなんでしょう。

しかし、その付けを払わされるのは一般国民かも知れません。大国であろうと小国であろうと、民衆を苦しめるのは間違いでしょう。