爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”成長戦略”の罠 ”失われた20年”はさらに続く」高橋洋一著

著者の高橋さんは大蔵官僚として勤め、小泉、第1次安倍内閣では経済政策のブレーンとして活躍していたそうですが、その後退職して大学へ移ったという方です。

 

経済政策については多くの論議を発しているようですが、今のアベノミクスの3本の矢と言われるものについて、その欠陥を指摘しているものです。

 

3本の矢とは、戦国時代の毛利元就の故事にちなんで名づけられたものですが、1本目の矢とは大胆な金融緩和、2本目の矢とは機動的な財政政策、3本目の矢として規制緩和等で民間投資を喚起する成長戦略というものを指しています。

 

これらの政策が実質的には円安誘導で海外投資資金を導入し株価を釣り上げただけの欺瞞政策であるということはこれまでも何度もこのブログで強調しているとおりですが、

安倍内閣1000日 - 爽風上々のブログ

どうもこの基本的なところで本書とはかなり立場の違いがあったようです。

P26には「第1の矢は政策的にはミスはなく確かな効果があった」とあり、これを読んだだけでもそれ以上読む価値はありそうもないと思ったのですが、ぐっとこらえて読み進めてしまいました。

 

結局、その先の主張は「日本の腐れ切った官僚の主導する成長戦略などというものは成功するはずがない」ということを繰り返し述べているだけです。

 

そんなことは強調されなくても明らかなことですが、分かっていない人も多いのかもしれません。

 

官僚として長らく内情を知り尽くしていた著者ですので、官僚の根性も熟知しており、自らの省益のみを考えているばかりで国益などはまったく考慮すらしていないという実態は確かにそのとおりでしょうし、そういった官僚任せの第三の矢などというものが何の効果も出ないのはもちろんです。

 

しかし、私自身の見解によればそもそも「経済成長」がなければやっていけない経済と言うもの自体が奇形化したものであり、エネルギーの水増しがなければ成り立たないものである以上、いずれは破綻する運命がさけられないものです。

 

というわけで、読んだだけ時間の無駄になった本でした。