爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

FOOCOM.NET専門家コラムで児林聡美さんが栄養疫学記事

表記のコラムで栄養疫学研究者の児林聡美さんが老人の食生活と健康の関係についてのご自身が発表された研究論文の紹介をされています。

 

たんぱく質は高齢者のフレイルティを予防するか? | FOOCOM.NET

 

「フレイルティ」とはあまり聞いたことのない言葉ですが、記事内での紹介によれば「フレイルティとは、高齢者に見られる、日常生活を送る上での運動機能の低下や、様々な健康障害が生じやすくなった状態のことを指す、医学の専門用語です。」ということです。

 

元の発表論文を見ると、多くの機関の協力を得て2100人以上の老齢女性の食事と健康状態を調査したようです。

High protein intake is associated with low prevalence of frailty among old Japanese women: a multicenter cross-sectional study. - PubMed - NCBI

 

この調査をまとめた結果から著者が挙げている傾向というのが、「タンパク質をある程度摂取している人のほうがフレイルティ(虚弱)状態になりにくい」というものです。

また、一つの可能性として「タンパク質は動物性、植物性の差はなさそうだ」ということと、「ロイシンの摂取量がフレイルティに関係しているかもしれない」ということも読み取れるようです。

 

ただし、これが「栄養疫学」というものの難しさだと思いますが、この傾向だけで因果関係が決まったかのようなことを言うわけには行きません。

 

記事の最後に児林さんも触れていますが、この結果をもとに「ロイシンが虚弱を防ぐ」なんていうことも言える可能性があるのですが、それはこの段階では無理な推論です。

しかし、程度の低い新聞や雑誌等ではこういった研究成果をつまみ食いして堂々と記事にしそうです。

 

疫学というものは今流行の「ビッグデータ」とも通じるものがあるのかもしれません。

多くのデータをまとめれば見えてくるものもあるのでしょうが、恣意的な解釈が過ぎればおかしなことにもなりそうです。