爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「鉄道・路線廃止と代替バス」堀内重人著

日本国有鉄道国鉄)の膨大な赤字が問題となり、改革が必要という雰囲気の中1980年に国鉄再建法が成立しましたが、これは国鉄の路線を幹線と地方交通線とに分け、地方交通線は鉄道からバスへの転換をすることになりました。

その後、ごく一部の路線は第三セクター鉄道として鉄道が残ったものもありましたが、大半はバスに転換され、その後さらに輸送力は低下し、結果的に公共交通空白地帯となったところも多くなっています。

 

本書はその過程を総論と各地の実例の両方を見ながら、交通評論家の堀内氏が細かい考証をしています。

 

ヨーロッパでは公共交通は公共財産であるという考えから政策的に補助金で運営されているところも多いのですが、日本ではそのような考え方がなく、鉄道事業にも独立採算制が求められています。これは、人口密度の高い大都市が各地に存在したために明治時代から昭和初期までは非常に収益性の高い事業であったという事情があるからです。

 

しかし、自動車の普及と道路整備が進んでくると特に地方の鉄道では収益性が悪化していきました。これを公共財産とする方向転換は起こらず、そのまま消え去っていったことになります。

鉄道と比べれば遥かに経費のかからないバス事業に転換するということが多くの路線で実施されましたが、バスでは定時運行が困難、乗り心地も低下、バス停に待合室などが無い、降車するのが道路なので危険などといった点が嫌われ、さらに利用者が減少するという悪循環に陥ります。

また、たいていの場合は料金も大幅に上がるということが多く、特に定期券の割引率が低下するために負担額が数倍にも跳ね上がるということが起きたためにさらに利用者離れが加速されました。

その結果、バスも便数減少から廃止へと向かいまったく公共交通が無くなった地域も数多いようです。

 

鉄道廃止となるはずが、第三セクター鉄道として生き残りその後数々の施策を行って経営状態も向上した例も少しですが存在はします。富山県富山地方鉄道の加越線と言われた路線も富山地鉄から譲渡されたものの利用者が減少していったところ、関係する高岡市射水市、商工会議所、自治会などが共同で対策協議会を立ち上げ、存続をする方向で検討され、第三セクター万葉線として再出発、利用しやすい施策を実施し利用者を増やしているそうです。

 

代替バス運行の事業転換をしたところではどこも経営は厳しいようです。しかし地方だけの支援だけでは存続も容易ではありません。国全体として交通をどうするかという視点がなければいけないのでしょう。

 

しかし、この先の日本社会では必ずや鉄道運送事業の復活が必要とされると私は信じています。