爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「だます心、だまされる心」安斎育郎著

著者は元々の専門は放射線防護学ということですが、以前から疑似科学や詐欺といった心理上の問題点についての考察に多く取り組んでおり、ジャパン・スケプティックス(超自然現象を批判的・科学的に究明する会)の元会長でもあります。

 

だます、だまされるというと詐欺のような犯罪を思い浮かべますが、手品やマジックといったエンターテインメントはこれを効果的に使っていますし、野生の生物も様々な手法で有効に使っています。

 

この本ではそういった「だまし」全般について様々な方向から描いています。

 

手品のトリック、常識的な観点の裏をかいて喝采を浴びるのですがかなり昔から存在しているものであり古代では魔術として使われもしたようです。

 

文学の中での「だまし」というものも数多く存在します。推理小説などはそれがメインになっています。作者のテクニックを味わうという点が面白みになります。

 

科学者も騙されるという章では、森鴎外脚気論争、野口英世の錯誤、長岡半太郎も錯誤、ピルトダウン人という犯罪、ミステリーサークルなどの例が挙げられています。

 

犯罪については悪徳商法も取り上げられています。振り込め詐欺は日々刻々変化しているそうです。そうしなければ相手も引っかかりません。犯罪者は総力をあげて様々なバリエーションを考えてだますことに全力を尽くすそうです。とても素人がかなう相手ではありません。

 

「だます」ことを様々な方面から見た総説でした。