爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日銀失墜、円暴落の危機」藤巻健史著

藤巻さんはかつては銀行に勤め、為替ディーラーとしても活躍したもののその後維新の会より参議院議員になった人です。

この本は2015年1月の出版ですので日銀の金融政策では追加的金融緩和を打ち出した直後のものです。したがって、つい先日に実施したマイナス金利というものはまだ視野に入っていません。実は著者は金融緩和政策ではもはや対応不能でありマイナス金利政策こそが求められていると主張していますが、現況を見てもその主張が変わらないかどうか、また新刊を見たいものです。

 

著者が一番恐れているのは、ハイパーインフレという極端なインフレ状態です。

このようになったのは今までに何回か例があり、1946年のハンガリー、2008年のジンバブエ、1994年のユーゴスラビア、1923年のドイツなどが挙げられます。

もちろん、日本の第2次大戦後のインフレもそれに当たります。

ハイパーインフレになれば庶民の生活は悲惨なものになります。もっともひどかったハンガリーの例では毎日195%の物価上昇、つまり一日で3倍になってしまいます。

このような状態になっても物資を押さえている富裕者はかえって儲けのチャンスです。しかし一般庶民にとっては貰った給料の一月分が一日で無くなるようなことになるわけでとても生きていける状態ではありません。

 

著者は現在のような金融緩和政策をしていけばハイパーインフレに向かっていくのは必至であると考えています。

あらゆる指標から見て、金融緩和というものは実は「日銀が国債を買い取ること」にほかならないと言えます。

日銀が直接国債を買い取ることは制度上できないのですが、量的緩和といいながらやっていることは市中に出回る国債を日銀が買い取ることであり、ほとんど利率もないも同然の国債を銀行が引き受ける理由は単に「必ず日銀が買い取るから」です。

国の発行した国債中央銀行(日銀)が直接引き受けることを「マネタイゼーション」というそうですが、これは世界的にも禁じ手となっています。それをやっているとなればその国の国債は暴落してしまいます。

欧州中央銀行(ECB)はすでにマイナス金利政策を実施していますが、一方でECBは国債の大量購入は拒否しているそうです。

中央銀行国債大量購入が何につながるか、それがハイパーインフレということです。

 

バブルの時期も消費者物価指数は低く安定していたそうです。上がっていたのは株や土地だけであり、そういった「資産インフレ」であったのがバブル景気だったのですが、ハイパーインフレともなれば消費者物価そのものが狂乱します。

 

日銀が国債を受け入れるとしても短期国債だけであればその満期まで待つという選択肢もありますが、今は長期国債も買っています。これではインフレになっても金利での調整などは不可能になります。もはやブレーキの効かない暴走車と化そうとしてます。

 

恐ろしい話ですが、この通りになるのかどうかは分かりませんが真実の一端は含まれていると思います。著者の危惧がいつ現実になるのか、意外に早いのかもしれません。