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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「体を壊す食品」手◎奈緒著

読書記録 食品問題

(普段はこういうことはしないのですが、あまりにも厳しく本の内容を批判していますので、著者名は一部伏せ字(◎)とさせていただいております。なお、伏せ字は「島」です。)

 

あれもこれも体に悪いということを広める本というものは書店にあふれていますが、これまではあまりそういったものを読むことはありませんでした。

しかし、現在ほぼ居住地の田舎市立図書館のみで書物を探すような状況でさすがに興味の持てるようなものは読み尽くしてきてしまい、まあ仕方ないかと読んでみたものです。

 

この本の著者は「大地を守る会」という有機農産物の製造販売を行う会社に就職し、その後食料ジャーナリスト?として活動されているという方です。

したがって本書内容も予想通りのものとなっています。

冒頭から「食品に含まれる危険なものは添加物と放射能だけではない」とホラーまがいの記述から始まります。

 

まあ、あちこちにお決まりの怖がらせ手法や、科学的間違い、一方的な主張が満載ですが、紹介してみましょうか。

中には正論というべきものもところどころに散見されますが、どれがそれかということは中々見分けにくいものでしょう。

 

日本の農薬使用量は世界一、確かにその通りです。

しかし、それを説明している部分では著者は事情を知りながらあえて不安を煽っています。

農薬の散布数は一年に何回と思いますかと問いかけ、「ほとんどの人は3回とか5回とか答えますが、実は30回も撒いています」と明かします。

その直後に、「使用回数は農薬の散布回数ではなく農薬に含まれる成分を1と数えるので、4つの成分が入った農薬を1度撒けば4回とカウントされます」と種明かしをしていますが、上記の例で実際の散布回数が何回かということは示しません。あくまでも「30回」というイメージだけを伝えたいのでしょう。

 

ただし、日本は高温多湿で病虫害が多いとか、作物を出荷するのに見た目ばかりを気にする消費者のせいで農薬を使わなければ売り物にならないというのは間違いありません。こういった正確な記述と恣意的な煽り部分とが混然としているのがこの本の特徴でしょうか。

 

農薬と化学肥料の登場で米や野菜の収量が爆発的に向上し国民が食べ物がなくて困るということがなくなりました。それはその通りです。

しかし、その影響で病気が増えることにもなりました。

それはいいのですが、「いもち病は窒素分が多すぎると出ることが知られています。窒素分をたっぷりと含んだ化学肥料が登場するまではいもち病もなかったのでしょう」と断言しているのはどこに根拠があるのでしょう。

いもち病はカビの一種であるいもち病菌の感染で起こりますが、ウィキペディアを見るだけでも17世紀に中国の明時代に最初に発生し、1700年頃には日本に流行したということが分かります。単に感染が広がってきたというだけの問題であり、これを知らないのか知っていてもわざと書かないのか、いずれにせよ正確な描写ではありません。

 

牛肉のBSE問題でも、「BSE対策に万全を期していた日本ですがアメリカ産牛肉の受け入れを緩和した」として、あたかもアメリカが圧力をかけ日本の検査体制を崩したかのような書き方です。

しかし、これも日本の取っていた全頭検査体制というものがBSEの把握には意味の有るものではなく、ほぼ金の無駄だったという指摘が多いことは無視のようです。

 

多くの乳牛は遺伝子組み換え作物を食べている

と、今度はこちらを攻撃です。これは確かに事実であり輸入飼料用穀物のとうもろこしや大豆は遺伝子組み換えであるのは間違いありません。

しかし、そのどこが問題かを挙げることなく、その事実だけを強調するのは「あの不安のある遺伝子組み換え食物がこんなに広がっている」ということだけを印象付けたいのでしょう。

 

遺伝子組換については、次に「全ての遺伝子組み換え食品が表示されているわけではない」と不安をさらに煽ります。

食用油、醤油には表示義務がない。異性化糖として使われるものには表示義務はない。微量に混入しているものも同様。等々とあげていくのも同じ手法です。

遺伝子組み換えで生物の変化というものは、DNAから転写され合成されるアミノ酸、そしてそれが結合するタンパク質に起きてくるもので、そこから派生してくる油脂成分や糖分が有害なものに変化するということはとても起きにくいものでしょう。

それらだけを利用する油分や糖分はどう見ても関係なさそうです。

 

有機農法についての記述はやはり自信がある箇所なのでしょう。

「虫食いの農作物は安全で美味しいというのは幻想」とか、「有機認定について理解している人はごくわずか」とか、有機農業についての問題点は的確です。

また、有機農家の中には堆肥を過剰に投与してしまうので弊害が多いというのもありがちなことです。

ただし、この部分は「それで何が言いたいの」ということになってしまっています。かえって「有機農業はすばらしい」と称えるだけのほうが分かりやすかったのでは。

 

放射線を当てたジャガイモが市場に出回っている。というのは知る人ぞ知ると言える問題かもしれません。

北海道の士幌町のJAでジャガイモの発芽防止での放射線照射が認められているためですが、このイモが「どこに出荷されているか分からない」とここでもホラーじみた描写です。

放射線照射の影響として、「誘導放射能が検出される」という研究がアメリカ軍により行われたとしていますが、これもどうも調べてみても確実なものはないようです。

どこから得た情報かは分かりませんが、怪しいものです。

また、放射線照射によりシクロブタノンという発がん性も疑われる物質が生成すると強調し、「これも現在は安全性に問題ないとされている」などと政府・学会が総出で問題をもみ消しているかの記述です。

放射線など関係なしに、自然の物質には発がん性があるものなどいくらでも存在するということを理解したくないのでしょう。ことさら放射線を取り上げる必要などありません。

 

「日本の野菜は安すぎる」のだそうです。

そのために農家は収入を確保することができず廃業が相次ぎます。

この価格では手間も暇もかかる有機栽培などできないのも当然ということです。

ただし、これをどうすればよいかということは提案されていません。そこが一番聞きたいことですが。ただ「わたしたち消費者がこの問題を真剣に考える」必要があると言われてるだけです。

そう言われてもね。

しかし、その次の主張がお笑いです。「この問題を真剣に考えなければ海外の野菜に日本の野菜は駆逐されてしまうでしょう」とはどういうことでしょう。

高くても国産野菜を買いましょうと言うことでしょうか、国産野菜をもっと安価に作れる体制を作れということでしょうか。矛盾だらけです。

 

まあこのような記述ばかりで、読むだけ時間の無駄だったかなとも思いますが、たまにはこういったことも頭の体操になるかもしれません。