爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー使用量半減のための社会改革 4 石油をどうするか

前述のとおり、石油は様々な用途に使われておりそれが現代社会を形作っているといえます。

少し前の数字ですが、2005年度の資源エネルギー庁統計によれば、発電部門12%、運輸部門35%、民生部門17%、化学工業原料15%、製造業14%などの比率になっています。

その後の動きとしては発電燃料は石炭や天然ガスに置き換わる傾向があったものの、原発停止の影響でまた上昇していると考えられます。

 

エネルギー使用量を社会全体で半減させるという目標を立てたとしても、石油についてはさらに厳しい目標を設定せざるを得ません。その供給減少は社会の存続に大きな影響を与えることになるからです。それを避けるためには計画的に使用量を削減していかなければなりません。

 

石油の用途の中では、化学工業原料は他に代替できるものが少ないので最後まで残さざるを得ないものでしょう。それが15%を占めるとなれば他の用途はそれ以上に削減しなければならないでしょう。

発電用、製造業使用は速やかに0に近づけるべきでしょう。しかしこれも石炭などに置き換えるだけでは済みません。その使用先自体の削減にまで踏み込まなければ本当の意味での変革にはなりません。

 

一番問題になるのは、使用量の中でも大きな位置を占める運輸部門での使用です。

ここでどうしても決断しなければならないのが自動車の使用です。大幅に使用制限をしなければ石油使用の削減は不可能です。

しかし、いうまでもなく現代文明の多くは自動車に深く依存しており、自動車のない社会というものを想像もできない状況になっています。それをほぼ捨て去らなければならないのですから、大きな社会変革を伴うことは間違いありません。

 それでも捨てなければならないのはなぜか。その理由が納得できなければ進むことはできません。その理由はただひとつ「やがて石油はなくなるから」です。

 

そう言うと数々の反論が試みられるでしょう。

今この時点で自動車を捨て去らなくてもいずれ新技術が開発され、電気自動車や水素燃料電池車が実用化(ほんとうの意味で)されるから大丈夫。

世界中の国が自動車を中心とした経済を回しているのに、日本だけが将来の不安から自動車を捨て去らなければならない理由はない。日本だけが石油を節約しても他国が勝手気ままに使って儲けるに決まっている。等々かな。

 

それらに対する答えはこれまでにも「エネルギー文明論」の中で書いていますので一つ一つには触れませんが、このまま使い続ければ危険は増すばかりということです。

対策はできるだけ早く取り掛からなければ行けません。

 

さて、現代社会の自動車依存は激しすぎるほどですが、そのもっとも強い一面は物資輸送のトラック依存と通勤通学や買い物などの足としての人員輸送でしょう。

これらは非常に利便性に優れているためにそれまでの鉄道輸送や船舶輸送などとあっという間に入れ替わってしまいました。

そして社会の形自体がそれに相応しい物に変貌してしまったために、数多くの弊害を生んでいます。交通事故被害者の数は徐々に減ったとはいえ多数に上っています。

また昨今は高齢化に伴い高齢ドライバーの事故の問題も大きくなっています。

さらに、町の形も変わり商業施設や公共施設の統合廃止、住宅の郊外拡散など、車がなければ何もできないということになり、買い物弱者などという人々も多数発生しています。

このような状況で自動車依存からの脱却を果たさなければならないというのは不可能にも近いものですが、それでも進めなければなりません。そのためには社会の形、町の形から変えなければならないでしょう。したがって数年でできるはずもありません。何十年もかかることです。

それでも始めなければ何時まで経っても変わりません。一歩ずつすすめることです。

 

自動車でなくても移動運搬にはある程度のエネルギーを要するのは間違いありません。それでもできるだけの低エネルギーで移動できる、鉄道輸送と船舶輸送に今後は特化すべきでしょう。

都市間の輸送は大型鉄道で、都市内の人員輸送は市電などの軌道を張り巡らせることで実施します。

大型の物資輸送は船舶利用で、小型のものは鉄道貨物輸送とします。

なおどうしても鉄道施設が利用不可能な過疎地帯では一部公共交通機関として自動車も残します。ただし、私有車両は禁止はしないにしても高額な利用税を課すことで抑制していきます。

 

これらの施策では現在のような日本隅々まで張り巡らされたような輸送網は維持できないでしょう。しかしそれはそもそも幻のような石油依存の夢だったと言えます。目が覚めればまた以前のように地産地消(とわざわざ言う必要もないような社会)に戻るだけです。

 

 なお、石油系自動車がだめなら電気自動車や水素燃料電池自動車に代えれば良いという考えもあるでしょう。

しかし、自動車保有台数が8000万台であるのに対し、ハイブリッドは除いた電気自動車プラグインハイブリッド含む)で平成26年度に11万台、燃料電池車に至っては150台という程度であり、これが実用的とはいえない証拠になっていると思いますが、強力にこれらに代替する政策を進めたとしてもあと何十年かかるか分かりません。そのようなものを進めている間に石油危機が何度も来るでしょう。

 

今後何十年かの石油危機時代を無事に過ごしていくためには緊急に自動車社会からの脱却が必要です。