著者の大宮さんは1948年生まれ、団塊の世代と呼ばれるお年ですが、7年前の61歳の時にこの本を出版されました。
ご本人は数々の職業を経験のあとライターとして活躍されたそうですが、ちょうど同年輩の人たちが定年を迎えた頃だったはずです。
私がちょうど今その年代に達していますが、状況は変わらずかえって悪化している面も多いようで、本書に挙げられている落とし穴には一々思い当たることろがあり、身につまされるものです。
第1章は60歳で定年を迎え、再雇用、転職、独立と様々な道を選んで仕事を続ける人が多い中でどれをとっても危険が多いということです。
多くの人が60歳で定年を迎えても同じ会社で再雇用ということが多いと思いますが、同じような仕事をしていても収入は激減という例がほとんどのようで、厳しいようです。
とはいえ、だからと言って別の職場を探しても今より良くなるところは殆ど無く、さらに独立などということを考えるとほぼ失敗ということになりそうです。
第2章では多くの人がここで得ることができる退職金というまとまった金額のものですが、それを狙った勧誘は数多くその中にはかなり危険なものも含まれており、なけなしのお金を失う人も多いようです。
犯罪的な悪徳商法話もありますが、合法的にしても投資信託や株式投資など慣れないところに投資して損をするという危険性も大きいところです。
第3章、第4章では都会に住んでいた人たちが定年を機に生活費の安い(と思われていた)海外移住や、地方へのU,Iターンの持つ危険性について語られています。
さすがに現在では海外移住の利点はほとんどなくなってしまいあまり話は聞きませんが、本書出版当時の円高状況だった頃はいろいろとあったようです。
しかし、ほとんど成功例もなく財産を失って日本に戻ってきた人がほとんどのようです。今ではひどい円安になり、さらに厳しくなっているでしょう。
田舎への移住も簡単なものではなく、安いと思った生活費もそれほど安くはなく、さらに地方特有の住民の付き合いもできないまま孤立するという人々も多いということです。
さらに、会社人間で仕事ばかりをしてきた人たちが何もすることもなく家にブラブラしているだけとなり、妻には愛想を尽かされて離婚という事例も多々あり、どのように生きていくかという事自体が問われることになります。
どれをとっても難しい問題ばかりのようです。しかし、考えてみれば定年になったから地域と関わりたいというのは遅すぎることでしょう。当然、会社勤めをしながらでも地域社会との付き合いを続けていれば仕事を辞めてからも困ることもなかったはずです。
ということは、現役時代の暮らし方自体にも問題があるということなんでしょう。