爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「中国歴史名勝図典」瀧本弘之編著

中国の明清の時代には各地の名所旧跡を版画として出版し、それを楽しむという風習が広がりました。

江戸時代にはそういった図版が多数日本にも舶載され、知識人たちに歓迎されたそうです。

本書は出版社で編集者として働きながら中国版画の研究を続けてこられた著者が、これまでに蒐集した版画をまとめ中国の歴史文化、そして江戸期の日本文化に役立つようにと出版されたものです。

 

版画に扱われている名所は中国全土に及ぶのでしょうが、当時の文化程度の違いからか、北京を除けば北方のものは少なく、江蘇から湖北湖南など南方の図が多いようです。

版画の出来は様々なようで、写実的なものもありかなり崩し気味のものもあり、概略だけ記してあとは地名を入れただけと言ったものまであります。

 

実は私も15年ほど前になりますが、一度だけ中国を訪れたことがあります。訪問先は、上海、蘇州、寧波といったところだったのですが、本書図版の中にも上海の豫園、蘇州の虎丘など、記憶の残るところもあり、数百年前の姿の版画ですが現在にも残る風景が甦りました。

 

細かいところまで見ていけば史料的な価値も大きいものかもしれません。その当時の社会の研究者、またそれを扱った小説家などには必携の書と言えます。

ただしそれ以外の人にとってはそれほど興味深く読めるものでもないかもしれません。