爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「古文書はこんなに面白い」油井宏子著

著者は中学校教諭のかたわら古文書研究を続けてこられ、その一般向けの解説書も多数出版されているようです。

 

古文書というものは江戸時代以前のものですが、ほとんどのものは筆書きの崩し字で書かれているために簡単に読むことはできません。

私も博物館で開かれる古文書展などを見に行ってもその内容はほとんど理解できないことに落胆するばかりでした。

本書はそのような崩し字の読み方の初歩を解説していこうというものです。

 

テキストは18世紀半ばに京都の山城町の庄屋の娘だった浅田伝さんが通っていた寺子屋の生徒心得というべき文章です。

10歳ほどの子供が読む文章としては非常に難しいものと感じます。またその使用する文字も簡単に書こうなどとの配慮はまったくされておらず、ほとんど漢字ばかりです。

書かれている内容は今でも良くあるような注意書きで、復習をしっかりすることとか、文字はきちんと書けとか、落書きをするなとかいったものです。

 

一文一文順番に、一文字ずつ解説されているのですが、そこに使われている文字の崩し方というのも、ほんの一例に過ぎず他の用法がいくつも並べて挙げられています。典型的なものは分かりやすいのですが、崩し方が激しいものは他との見分けも難しいようです。

 

あとがきにありますが、著者が古文書の読み方を指導した学生が感想として述べた「たった200年ほど前の自分の国の人が書いた字を今の一般人が読めないのは残念であり、それで文化の継続ができるのか」というのが非常に大きな問題点と思います。

今でも旧家になれば家の中に先祖が書いた文字などが残っている場合も多いと思いますが、それすら解読できないというのは悲しい状況かと思います。