爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「死都日本:再読」石黒耀著

本書は2002年の出版なのですが、購入したのは文庫版でその初版は2008年ですので、そのくらいの時期に最初に読んだと思います。

この本を読んで「カルデラ噴火」というものを初めて本格的に知り、いろいろと調べることにより大袈裟に言えば人類史というものも見方も変わったと思います。そのような衝撃的な本だったのですが、最初に読んだ時にはショックばかりが大きくて細かなところまでは読み込めていなかったようです。改めて読んでみて分かったこともあります。

 

著者の石黒さんは内科の医師ということですが、本書出版後も執筆活動もされているようです。

しかし、本書紹介文等にも書かれているように、その火山について、噴火の詳細についての描写は非常に正確であり、出版当時に火山学会の専門家も驚嘆したということです。

その後も、東海地震について、あるいは富士山噴火についての作品も出版されているということですが、未見です。

 

科学書ではなく小説なので、細かいあらすじ紹介は避けますが、宮崎在住の火山学者が霧島を中心とする巨大カルデラ(加久藤カルデラ)の噴火に遭遇し、火砕流や火山灰の中を脱出するという描写と、首相をリーダーとする政府の噴火対策チームの活躍を描いています。

 

最初読んだ時にも気になっていたのですが、川内原発は停止させて燃料棒もすべて撤去するという対策が可能としながら、住民の避難はできなかった(私も住民の一人ですが)というのが何故かと言うことですが、やはり自治体を動かさずに国が直接避難させるというのはできないのでしょうね。

しかし、やはり数時間の間に300万人が火砕流で犠牲になるというのは大きいことでしょう。

 

さらに、日本のほぼ全域が火砕流と火山灰に覆われほとんど生産力も無くなる中でどうやって国の消滅を防ぐかと言う政府の対策も希望があるかのように描かれていますが、やはり難しいのではないかと言う思いがします。火山の塵による気温低下で世界的に農業生産が壊滅しかねない中では食糧確保も思うようにはいかないでしょう。

また、周辺各国の行動も予測は難しいのですが、住民救助の名目で中国人民軍が多数上陸し、そのまま占領するという可能性も無いわけではないでしょう。

 

数万年、数十万年という時間の中で見れば、日本列島はすべてのところで火山噴火の被害を受けているそうです。それをすっかり忘れて自分の土地は大丈夫と言う錯覚を抱いている日本人というのは哀れな存在でしょう。

 

冒頭にある主人公の大学での講義での言葉を挙げておきましょう。雲仙普賢岳で起きた火砕流火砕流と言うものの恐ろしさを広めたが、あれが「大火砕流」であるという誤った情報を広めたという負の面もあります。カルデラ噴火での火砕流の大きさと比べると1000分の1以下の大きさのものであり、火砕流の中では小規模に近い程度のものだったのです。