爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「サプリメントの正体」田村忠司著

著者の田村さんは医者向けのサプリメント供給の会社を経営しておられるということで、サプリメント業界の状況にも詳しいようです。

ご自身の立場もあるでしょうから完全なサプリメント否定ということはできないでしょうが、実際はかなり怪しい内容のサプリメントも多いようで、さらに製造上の問題から表示通りの内容もないものも多数あるという業界の実態も語られています。

 

私自身も生化学は一通り勉強してきましたので、おかしなサプリメントが多いという感覚は持っておりました。酵素飲料などは意味がないとか、コラーゲンやヒアルロン酸は食べても無駄ということは分かっていましたが、それ以上にサプリメントの状況はひどいもののようです。

例えば、東京都の調査では健康食品売り場で購入できる製品の半数以上、インターネット通信販売で購入できるものの大部分に不適正な表示・広告が見られたそうです。

また、サプリメントも有効成分はごく微量でありほとんどが賦形剤と呼ばれるもので固められているのですが、その賦形剤としてよく使われる乳糖などがアレルギーの原因となる場合もあるようです。

また、固形の錠剤としてあるサプリメントがほとんどですが、その錠剤が食後に分解して成分が吸収できるかどうかを調べる重要な試験に、「崩壊試験」というものがあります。胃液のような成分の液体に入れてどの程度の時間で溶けるかを見るものなのですが、全く溶解しないという製品が多かったということで、いくら有効成分が入っていても体内に吸収できないということになります。

 

さらに、医薬品と間違えさせようというような薬効性をうたうものも後を絶ちません。薬事法違反すれすれの広告で売ろうというものが多いようです。

また、少しでも原材料コストを下げようとして人毛をアミノ酸源として使用と言った例も見られるようです。

天然原料を使用すべきところを合成原料で済ませてしまうということもあるということです。

ただし、この点は著者の言うことにも問題があると感じました。合成原料では化学構造が異なるものが混入するというのは間違いないことですが、それを分離することもできないことではありません。(コストがかかるのでやらないでしょうが)

それよりも天然原料であれば良いとも言えないということは著者はご存じないのでしょうか。天然品にも多くの夾雑物がありそちらに毒性があるということも多々あることで、その危険性も考えるべきかと思います。

 

また、有効成分の配合量として記載されていても製品分析をするとそれだけ入っていないということも多いということです。単にメーカーの「目標値」にしかすぎないものを「配合量」と書いているとしか考えられないようで、品質管理のレベルが低すぎるところが多いとか。

 

そのようなサプリメントですが、著者が推奨するものは「基礎的なビタミンとミネラルを含むもの」ということです。

実はこのビタミンとミネラルというものが、現代の食生活の中でかなり摂取量が少ない場合が多くなっているということです。

その理由は、加工食品の蔓延ということで、原材料にある程度ビタミンなどが含まれていたとしても、加工の過程でどうしても食品衛生の観点から過剰な加熱などが行われ、さらに添加物が加えられるために出来上がった食品中にはかなり減少した量しか残っていないためではないかと言うことです。

 

その他の医薬品まがいの効能をうたうものや、ダイエットサプリなどと言うものはほとんど飲む価値はないということです。

 

原材料から家庭で調理して食べる食生活であれば栄養は十分ですが、それが不可能で加工食品に頼る部分がある場合はマルチビタミン・ミネラルのサプリを適宜摂取するというのが著者の主張なのでしょう。

それが妥当かどうかはこの本を読んだだけでは判断できませんが、かなり説得力のある印象を受けました。