爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ロシアン・ジョーク」酒井陸三著

著者の酒井さんはフリージャーナリストですが、ヨーロッパに頻繁に出かけており、その途中にロシアにも立ち寄るようになりその回数は多数にのぼるようです。
ロシアン・ジョーク(アネクドートという名で知られる)には秀逸なものが多いということは知っていましたが、そういったものを数多く収集し紹介している本だと思ったら、少し違いました。
ソ連崩壊後のジョークを数多く紹介していますが、その対象となる社会の現象というものを、あまり日本人は知らないようです。(私もそうです)そのロシア社会そのものをジョークに絡めて紹介しているというのが本書の目的でした。

あの鉄壁のように思えたソ連を中心とした共産主義国家があっという間に崩れ去ったのはまだ記憶に新しいものですが、そこから今のようなロシアなどの国になっていったという社会の内情についてはほとんど断片的なものしか知りませんでした。
かなりの社会の混乱が起こっているようだということは聞きましたが、まあ国が生まれ変わるのだから仕方のないことかと感じていましたが、本書によればそんな生易しいものではなかったようです。

ゴルバチョフの指導力で一気に崩壊に向かったようなソ連でしたが、本書によればゴルバチョフも資本主義などと言うものについてはまったく知識もなく、どのような社会になるかと言う進路も見えぬままやってしまっただけのようです。
さらに、その混乱の隙を突きエリツィンが大統領職をかすめ取りますが、ほとんど詐欺同然のものでした。さらにほぼすべての国有財産を民営化するという名目で部下などに格安で売渡し(というか横領し)そのような方法で巨万の富を得たのが、「オリガルヒ」と呼ばれる連中だったそうです。
そのようにして国有財産の窃取に成功したのですが、エリツィンには国家を運営していこうという意思も知識もまったくありませんでした。やることはすべてむちゃくちゃで社会も崩壊に向かったようです。

そこに頭角を現したのがプーチンで、最初は無名で実力もなかったものがうまい具合にテロ事件が起こり、(??)それを収めるには自分しかないという宣伝でまんまと政権を奪取しました。そしてほとんどのオリガルヒを叩き潰し、ようやく混乱を収束させたというところです。(2007年時点の話です)
これには世界的な石油価格の高騰と言う追い風もあり、それを十分に利用したものです。

こういったロシア内部事情を、本当に数多くのジョークをちりばめながら語っています。ジョークの本としてみると間違えそうで、現代ロシアを理解する本として読むべきものかもしれません。