爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「新買ってはいけない7」垣田達哉、境野米子、渡辺雄二著

買ってはいけない」というシリーズはかなり売れてはいたものの、その内容のひどさは有名でそれを批判する本も何冊も出版されています。そのうちの一冊「買ってはいけないはうそである」日垣隆著は読んでここにも書評を書いています。http://d.hatena.ne.jp/sohujojo/20130705/1372977344
まあ一言で言って科学知識を曲げて流用し、そういった専門知識に疎い人々を扇動するというもので、そういった姿勢を科学者や評論家たちは的確に糾弾していました。

しかし、その後もそのシリーズは続けて何冊も出版されており、同工異曲のものをそんなに出しても買う人がいるんだろうかと不思議に思っていました。2010年出版のこの本を図書館で見つけたのでちょっと中を覗いてみると少々以前とは変わった内容も入れているようですので、読んでみることとしました。

本書で取り上げられている商品は、化粧品、サプリ・健康食品、トクホ、その他雑貨や食べ物・飲み物などと言うもので、特にサプリ・健康食品、トクホといった商品群はマスコミがまったく批判的な記事を取り上げようとしないものですので、それを批判しているという姿勢自体は貴重なものかもしれません。(マスコミが取り上げないのはテレビをしばらく見ていれば分かります。CMのほとんどがこの製品群のものです)
ただし、その取り上げ方の根拠として、健康食品等は薬事法違反を挙げていますが、これは当然のことではありますが、やや弱い姿勢であるかもしれません。
これはつまり、例の「何々が気になる方に」というCMの言い方が薬事法違反ではないかと言うことなんですが、すべての健康食品はこのギリギリのラインを狙ってCM作成をしており、それがいけないということは明白なんですが、それもこれも法律と消費者の知識と言う(あるのかないのか怪しいもの)もののせめぎ合いになるわけです。
しかし、さすがに週刊金曜日厚労省都道府県薬事関連部に話を聞きに言っていますが、どうも取り締まり側の態度にも問題ありと言う結論を得ているようです。
ただそれだけでは健康食品というものの問題点を尽くしているとは言いがたい気がします。食品からの健康というものは有効成分だけを大量に摂取するという方向はいけないということが基本にならなければならないと思います。

トクホは単なる健康食品ではなくその効果が一応(本当にちょっとだけの”一応”)科学的に確かめられているということになっていますが、その辺のところについて本書は取り上げています。
サントリーの「黒烏龍茶」では、中性脂肪が高い男女20人に高脂肪食とともに黒烏龍茶を飲ませたところ、食後4-5時間後の中性脂肪の増加量が20%少なかったというデータを得ているということです。
それに対し、本書は「わずか20%少ないにすぎず、これを飲んでいるから脂肪を多くとっても大丈夫」という心理が働けばかえって脂肪吸収量が増える」とあります。これは正論であり、ほんのわずかな効果を盾に何をどれだけ飲み食いしても大丈夫といったイメージを売るようなCMが他社でも横行しているのがトクホ市場の大問題であり、この点では本書は正しい議論をしていると言えるでしょう。

本書で見るべきところはこの2章で、その他の部分では相変わらず「何々が含まれているがこれには発がん性の疑いがある」という従来からの主張と同じ姿勢のものでした。その辺は読む必要なし。