爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「細菌感染非常事態宣言」荒島康友著

エボラ出血熱やMERSなど危険な感染症が次々と流行していますが、本書は1996年の出版であり、このような状況を予期したということではありません。しかし、その当時もO157が大流行を始め、その他の感染症もしばしば流行していたのは現在と変わらず、危険性は今も当時も変わらないのかもしれません。

著者は当時日本大学医学部所属ということですが、実は獣医者ということです。したがって、人畜共通感染症がご専門だったと思いますが、その視点からの人間の医療に対するアプローチが独自の観点を見出したのでしょうか。
普通のお医者さんとは一味違った切り口を感じます。

なお、本書は新書版で一般読者といっても非常に広い読者層を予測しているらしく、語り口も軽いものになっています。良く言えば分かりやすく、ただしちょっと扇情的でなにか週刊誌かスポーツ新聞の記事を思わせるような文章になっています。もちろん基本的には内容に間違いはないのですが、過度の強調と脅しめいた口調が気になります。(”感染したら100%死亡するというウイルスが次々と出現しているのだ”といった調子です)
また、「細菌感染」と題名にはうたってありますが、内容には細菌感染症ばかりではなく、ウイルス、寄生虫、原虫など網羅してありますので漏れはないようです。

上記のとおり、著者ご専門の人畜共通感染症については非常に詳しく記述されています。つい最近禁止されたばかりの豚のレバー生食についても、通常言われている細菌汚染ばかりでなく以前から危険視されていた回虫卵汚染なども強調されています。
また、ペットからの感染について提起されているのも行き過ぎたペットブームとなっている現在こそ必要なものかもしれません。犬からのパスツレラ症、猫の引っ掻き病というリケッチア症キタキツネエキノコックス、インコなど小鳥からのクラミジアによるオウム病など、動物との関係による病気はこれからも頻発しそうです。

ちょっと古い本でしたが、なかなか見るべき内容があったと思います。