爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

イギリスでは生涯の間にカンピロバクターに感染する人が3分の1

こちらもよく参考にさせてもらっているFOOD WATCH JAPAN ですが、国立医薬品食品衛生研究所発表の食品安全情報(微生物)によればイギリスの調査では国民の3分の1が生涯1度はカンピロバクターに感染しているそうです。
http://www.foodwatch.jp/science/nihsreport/52781
これは年間の感染者数がイギリスで25万人以上に上るという推計から来た数字です。
日本では検査して確定した数字しか出しませんので非常に少ない感染者数しか出ていませんが、実数はイギリスよりもかなり多いものと考えられます。

感染源はイギリスでも同様で、主に鶏肉のようです。もちろん、あちらでは生食などというバカなことをするわけではありませんが、取扱いの不備で感染するのでしょう。生肉を扱った器具から生野菜などへの広がりや、加熱不足によるものと推定できるようです。

もっとしっかりと「カンピロバクター」という微生物について良く知ってもらいたいと思います。
カンピロバクターは動物の腸管(大腸など)に広く存在しており、その動物に対しては病原性を示しません。「健康」な家畜であってもその腹の中にはカンピロバクターが居ることがあるということです。ここで「うちの家畜は健康に育っているので病原菌はいない」などという売り文句が誇大であるということが言えます。
その動物を屠殺して食肉化する際に、消化器管をまったく傷つけなければカンピロバクターなどの腸管性の微生物が出てくることはないのかもしれませんが、事実上はそれは不可能のようです。特に鶏のような小動物の場合は難しいのではないのでしょうか。

さらに、カンピロバクターは「微好気性微生物」という特徴を持っています。これは、通常の大気が約20%の酸素濃度であり、好気性微生物もその濃度の酸素濃度を好むのに対し、それより低い酸素濃度(3−15%)で生育する微生物の種類があります。なぜこのような生物がいるかというと、その生育環境がそのようなものだからということになります。動物の腸管内というところは酸素が供給されるわけではなく、非常に低い酸素濃度になっていますので、それに適応した微生物が存在するわけです。なお、同じように腸管内に生育する微生物でも酸素が多くても平気なものも多数あります。大腸菌などは酸素があっても関係なしですので微好気性微生物ではありません。
なお、カンピロバクターでは逆に高酸素濃度では死滅が進むということもあるようです。つまり、食肉化した精肉にカンピロバクターが着いていた場合、それを空気中に置いておくと徐々にカンピロバクターは死滅していくと考えられます。ここで、良く言われるような「うちの肉は新鮮だから大丈夫」という話がまったく逆であることがわかります。かえって古い肉の方がカンピロバクターは少なくなっていそうです。(まあ大腸菌は増えそうですが)

また、カンピロバクターは非常に少数であっても体内に取り込まれれば盛んに増殖し病原性を発揮するという性質があります。これは病原性大腸菌も同様ですが、ほんのわずか、数百個の菌だけで感染する例もあるようです。
他の病原菌の場合、かなり多数であっても体の抵抗力により菌を排除する力があるため、抵抗力の弱い子供やお年寄りには感染しても成年者は大丈夫ということが多いのですが、それを潜り抜ける性質があります。
微生物の場合の数百個などというのはごくわずかなものです。もし培養して目に見えるほどまでに増殖すればその菌数は数億個いじょうにもなります。そのほんの一部が食べられただけでも感染する可能性があるということです。

カンピロバクター感染はほとんどの場合は下痢や吐き気のみで回復するものですが、まれに「ギランバレー症候群」という重症化する難病の原因となることもあるようです。
とにかく、加熱をきちんとすればまったく心配の要らない微生物です。ただし、非常に広く分布しているのも間違いありません。良く知って対応すれば防げる感染です。知らずにバカな食生活をしないでもらいたいものです。