爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「もしもあの写真がネットにバラまかれたら」佐野正弘著

副題は長すぎたので表題には書いていませんが、「あなたの知らないスマートフォンソーシャルネットワークの落とし穴」というものです。
これについて、携帯電話・モバイル専門のライターの佐野さんが2011年に書かれています。当時はまだスマートフォンの台数が1000万台程度だったということですが、それから4年の今では携帯電話の中でもスマートフォンが圧倒的多数を占めるようになってしまいました。
この本ではこれまでの携帯電話(ガラケー)とは異なるスマートフォンの特性と危険性を解説し、きちんとした対策を取り使っていく必要性を強調していますが、どうやら著者の危惧は当たっていたようで現在では様々な事件が起こっているようです。

コンピュータにはウイルスというものが蔓延しており、様々な対策ソフトも開発されてはいますがいたちごっこという状況です。
著者はこれらのウイルスは「マルウェア」と呼ぶべきであるという立場であり、本書ではこの言葉を使っています。
このようなマルウェアはコンピュータ開発のかなり早い時期から付きまとっていたものですが、当初はコンピュータ知識をひけらかすためのような、「目立ちたがり」のものが多かったものが、最近では金銭目的など「目立たないもの」に主流が移ってきました。だからこそ大きな危険性を持つものになってきているとも言えます。
金銭を得るといっても直接金銭を引き出すだけでなく、個人情報を得てそれを売買するという手段もあり、様々な方法が出ているようです。

携帯電話のインターネット接続というと日本でまずiモードという携帯電話サービスで普及しました。アップルのiPhoneが爆発的に流行してスマートフォンブームが到来しましたが、iPhoneも日本のiモードの良いところを取って考えられたということです。iPhoneの成功を見てアップル以外のメーカーもAndroidで参入してきました。
しかし、iPhoneがアップル社の政策として非常に厳しい制御がかかっているのに対し、Androidは自由度が高く情報もオープンにしているという特質があります。それは多くの開発者にとって有利なのですが、一方マルウェアの製作者にとってもやりやすいという面があります。そこで様々なマルウェアが一気に増加してきたようです。

またスマフォというものはコンピュータの使用法と違い24時間常時接続されているのが普通です。したがって、マルウェアが感染するとそれを遮断する間もなく続々と感染を広げるということがやりやすくなります。家庭や会社で使っているコンピュータは使い終わると電源を落とすというのが普通なので、その間は動きが止まり対策が間に合うということもあったのですが、それができなくなったというのも危険性を増す要因です。
もちろん、アップルも事前審査等の対策が厳しいといっても絶対安心ではないようで、様々な侵入方法の研究がされておりマルウェアも発見されています。結局は多くの加入者がいるところには甘い汁も多いということで狙われていくのでしょう。

スマフォがパソコンとほぼ同様の使用感で使えるというのも危険性を増す要因があり、これまでパソコンの使用経歴が長い人はパソコンでの対ウイルス対策に慣れているためやや油断しているという傾向があるようです。スマフォではまだパソコンほどには対策が充実していないために感覚の差を突かれる恐れがあるようです。
また、パソコンのネット接続では接続先のURLを確認するということもよく行われており、怪しいURLにはいくら外観が似ていても近づかないというのも常識になっていますが、スマフォではURLの表示がフルにはできないので、その危険性もありそうです。
スマフォ用のアプリというものも、有料が普通ですがそれを無料で提供という怪しいものもあるようで、これもマルウェア感染のもとになりそうです。

これらの危険性とその対策というのは、パソコンでの通信に慣れた人なら覚えがあることでしょうが、実は現在急激に増加しているスマフォユーザーにはそこまで認識が深くない人も相当数に上るようです。販売者がそのような知識不足の人にも売り込むことで、利用者を増やそうとしていますから、それに伴い危険性も急激に増加しているのでしょう。
情報流出や金銭被害といっても急に大量のものが盗まれれば気が付きやすいのですが、1件あたり数百円といった額を抜き出すようなことをしてもほとんど気づかれないこともありそうです。しかしそれを数万人から抜くことができればすぐに多額の収入にもなります。こういった被害もありうるというのがスマフォマルウェア犯罪の可能性のようです。

実は私はまだスマフォには移行せず、ガラケーのままです。この本を読んでますますその気が無くなりました。