爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「自転車生活でいこう!」エイミー・ウォーカー編著

著者はカナダ在住の自転車雑誌発行者ということです。アメリカやカナダなどの自転車ライターが集まって自転車生活全般について書かれたものです。

ヨーロッパ各国は自転車に乗る人が多いようですが、北米では非常に少ないようです。本書にも書かれているように、総移動量に対する自転車の占める割合というものが、ベルギー・ドイツで10%、デンマークで20%、オランダでは30%に上り、男女・年齢を問わず自転車利用者が多いのにひきかえ、北米では移動割合はわずかに1%で、利用者もほとんど若い男性に限られているということです。
したがって、北米での自転車利用者というのは競技自転車愛好者と重なる部分が多く、売れ筋の自転車機種もそれ向きのものになってくるようです。

それではいけないというのが、著者などの自転車愛好者で、できるだけ自転車を使用することが道路環境の悪化を防ぐことにもなり、交通マナーも向上するということを強調しています。
なお、アメリカではほとんどが自動車で移動していることになるのですが、長距離移動もあるものの多くは5km以下の通勤・買物等であり、決して自転車では無理といった距離ではないようです。意識改革が必要ということなのでしょう。
日本では「ママチャリ」と呼ばれる実用型の自転車が非常に多いと思いますが、北米では前述のような事情からスポーツタイプの自転車がほとんどで、実用車すなわちチェーンガード、泥除け、ライト、荷台などが装備されているタイプのものはかえって少ないそうです。そのために、実用に使おうとすると難しいこともあるようで、荷物は積めない、夜は危険ということもあるようでオプションでライトを付けるとか、荷台はどうするといった話題も本書中には扱われており、自転車文化の乏しさというものが目立つものとなっています。

自転車専用道については、日本もそれほどエラそうな顔はできないようですが、アメリカもほとんどない状態のようで、その点はヨーロッパ各国とは相当差がありそうです。自転車道を作ろうとすると反対もあるとか。また一般道を走ると自動車の運転が乱暴で危険も大きいということで、困難は多いようです。

本書は北米の自転車事情についての案内がほとんどで、先進国としてのヨーロッパ事情についても若干触れてはありますが、日本についてはほとんど記述はありません。おそらくヨーロッパほど環境は整備されていないものの、使用機会はかなり多いというところではないでしょうか。
しかし、日本について記述が1箇所だけありました。「固定ギア」というフリーホイールがないタイプの自転車についてですが、ペダルとホイールが連動しているために速度調節を必ずペダルの回転でしなければならないというものです。日本でもそれが逆輸入され、ブレーキのついていない(構造上不要)ものに乗って事故を起こすと問題にもなったものですが、実はこれは日本の競輪用自転車が伝わったもので、その部品には日本自転車振興会のNJSという刻印が必ず刻まれているそうです。

私も自転車に乗る機会は結構ある方なので、興味深いものでしたが、事情は各国相当違いがあるようです。日本は決して自転車が走りやすい環境ではないと思いますが、それの是正には他国を参考にせずに自分たちで考えるべきなのでしょう。