爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「金沢を歩く」山出保著

著者の山出さんは前の金沢市長です。ちょうど私が金沢に仕事で行っていた時に市長選があり、若い現市長に僅差で敗れたということが記憶に鮮明にあります。それまで5選20年という長期在職で、同様に県知事も多選であったので、ここの人はこういうのが好きなんかいなと思っていただけにこの多選阻止は印象的でした。

それはさておき、金沢はちょうどこの春に北陸新幹線開通ということで非常に観光客など訪れる人も増えているようですが、本書はガイドブックとして書かれているわけではないものの金沢の歴史から地理、産業や観光まで非常に深い内容であり、じっくりと金沢を見ようという人には面白いものとなっています。
金沢には3年ほど居たのですが、兼六園や近江町市場、ひがし・主計・にし茶屋街、等々は訪れたものの今ひとつ見足りないという感覚がありました。もしこの本を金沢滞在中に見ていれば実際に足を運んでいくこともできたかも知れません。そう思えば惜しいことをしました。
なお、仕方のないことではありますが、ところどころに著者の市長在職中の業績に触れた部分もあり、少々誇らしげに見えないこともないとは感じます。

1章は「金沢のまちを歩く」で、一般的な観光ガイドよりは相当細かいところまで解説されています。金沢城兼六園周辺の有名観光場所だけでなく、卯辰山浅野川周辺にある小さな美術館・博物館も触れてあり興味を持つ人には面白い紹介です。
2章は「金沢の歴史を歩く」もちろん前田利家入城からの歴史ですが、それだけでなく明治以降の変遷も解説を加えています。
3章は「職人のまちを歩く」金沢は金箔、加賀友禅など多くの工芸品を盛んに生産している町であり、石川県内まで広げれば輪島塗、山中塗などの漆器、久谷焼といったものも有名です。また食品関係でも独自の食文化を守る地元企業があり、日本酒・醤油・漬物類など盛んに生産されています。この辺のところは私自身が金沢で関係していた仕事とも重なり、非常に懐かしく読ませていただきました。名菓「柴舟」は帰省するたびに手土産に買って帰ったものであり、その味が思い出されます。

4章は「人とまちの暮しを歩く」と題し、福祉や自治など元市長ならではの内容となっています。

短い間でしたが金沢生活を経験した身にとっては非常に興味深い内容の本でした。