著者の武光さんは歴史学者で大学教授ですが、一般向けの歴史解説書を若いうちから何百冊と書いておりそのリストを見ると圧倒されます。
ただし、その歴史観というのは極めて通説通りというもののようで、あまり疑問を持った見方というものはないということです。(実見ではなくほかの評論の引用です。申し訳ない)
本書はトロイア戦争から最新の湾岸戦争(1992年出版ですので)までの99の戦争をコンパクトにまとめるというもので、そういった知識があやふやな者にとっては基本を身に付けるという意味はあるのかも知れません。
ただし、深い疑問を持つ場合には物足りなさは残ります。
古代、中世、近代と各年代ごとに武器と戦術の関係の解説がされています。古代ではギリシアの重装歩兵という戦法が圧倒的な強さを誇り、アレクサンダーの制覇を可能としました。その前には前代の軽装の騎兵ではまったく歯が立たなかったということです。しかし、なんとかできなかったのかという思いは残ります。現在であればあのような動きの遅く、かつ密集した部隊はかえって不利なように思いますが、それは古代の状況では異なったのでしょう。
異文化の軍団が戦争をする場合はその戦法の相違で圧倒されるということは起こりそうです。モンゴルの制覇というのもその一つでしょう。ヨーロッパの一騎打ち戦法はモンゴル騎馬隊の集団戦法の敵ではなかったとあります。
その時代特有の問題点があったのでしょうが、それぞれの時代で戦争というものには全力を尽くして当たっていたと思います。はるか後世の今から振り返れば不思議に思うようなこともあったのかも知れません。そういったところを知りたいのですが、それはまた別の書物を探さねばならないのでしょう。