爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー文明論「石油が減耗すればプラスチックはどうする」

最近の石油用途の割合では石油化学原料(プラスチックだけとは限りませんが)は20%程度を占めているということです。
エネルギー源、燃料としての石油の重要性については何度も触れましたが、石油は化学工業の原料としての役割も非常に大きなものです。
低沸点成分の混合物であるナフサからエチレンなどの物質を精製してそれを原料に様々な反応をさせてプラスチックや合成繊維、また酢酸やエタノールなど生物反応でもできるものでも安価に(これまでのところは)できるということで広く合成化学として実施されています。

石油の供給が減少していけば、このような用途に向けられる石油も価格が高騰して行き、使われる量も減っていくことになるでしょう。
現在の社会では石油化学工業から得られる物質で動いているといっても良いほどです。
合成樹脂はありとあらゆる用途に使われています。容器や包装だけでなく、自動車などの機械向けの用途や建設材料、電気製品など挙げても切りがありません。また合成繊維は現在の衣料用繊維では相当量を占めています。
つまり、現在の人類の文化という面でも石油由来の化学物質にほとんど依存しているということになります。

石油化学が起こるまではこういった用途には何が使われていたでしょうか。木質や紙(これも木材由来ですが)が容器や包装材料として使われ、繊維質としては羊毛や絹のような動物質原料、木綿、麻のような植物質原料が使われました。
石油が減耗したからと言ってこのような動植物原料に戻ることができるでしょうか。木材はそのような時代が到来すればそのまま燃やしてエネルギー源としたり、発酵させてアルコールにしたりと引く手あまたです。もちろんその再生産速度は非常にゆっくりとしたものなので、とてもすべての需要を賄うことはできないでしょう。
植物性原料によるプラスチックなどというものも研究はされていますが、これも供給量はわずかなものでしょう。

とにかく、現在の石油文明というものは燃料としての石油だけでなく、形としての合成樹脂・合成繊維に至るまでほとんどを石油に依存しているということです。エネルギー源という方向では代替エネルギーということが強く言われていますが(その実現性は疑問ですが)プラスチック原料には代替はあるのでしょうか。とても何を持ってきても賄うことは不可能でしょう。ここでも石油減耗時代の到来が文明の崩壊につながりかねないと言う一面を示しています。
崩壊する前にあらかじめ減らして行き順応させること、それが混乱を防ぐ唯一の方策なのですが、実現の可能性は極めて低いでしょう。