爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

アベノミクス 輸出企業の利益がトリクルダウンされない理由

アベノミクスの手法として一番のものは円安誘導して輸出企業などに利益を上げさせ、それが国内の他部門へ流れるという「トリクルダウン効果」があるからと言われています。
それ自体は確かに以前は存在していたでしょう。事実、各国ともに自国の通貨を安くして輸出企業に息を吹き返させるということを行うことは良くあることのようで、それは十分に警戒されていることです。(ならばなぜ今回の円安誘導がアメリカなどの了承が取れたのかという疑問がありますが、それは置いておきましょう)

しかし、思ったほどに輸出企業が儲かっていないということも言われています。すでに海外への生産拠点移転が進んでいるからと理由が取りざたされているのですが、ならばなぜ円安が必要かという疑問も残ります。

さらに他の要因も出てきています。今年2月に麻生副総理が日本企業の内部留保が増大していることを「守銭奴」と批判したことに対して、経済界の提灯持ちの日経に載ってた記事です。http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20150303/437731/
そこで主張されているのは、なんと「国内での投資機会が少ないので海外投資に当てるために内部留保をしてチャンスを待っている」というものです。そこには国内の多くの人々に悪影響を与える円安環境で儲けさせてもらっているという認識は全く無く、企業の体質強化のためには何をやってもよいと言う姿勢が丸見えです。
またその記事には巨額の海外M&Aの例も載っており、実際に円安儲けを手にした企業がそれを使って海外投資を強めている姿勢が明らかです。

もはや一国全体を富ませるという政策はあり得ません。何らかの政策を取るとするならそれで得をする人間、損をする人間がはるかに離れた境遇になるのが現在のグローバル化経済の世界です。ならばこの政策は誰を儲けさせようとしているのか、誰を踏みつけにしているのかをはっきりと認識し、踏みつけにされた側はせめてもの対抗策として選挙という機会での報復を考えなければなりません。

漫然と「景気が良くなっているようだ」などというイメージで政権与党に力を与えるのは愚の骨頂です。ほとんどの人はこの政策で損をしているはずです。そこをよく考えなければなりません。