爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本語ふしぎ探検」日本経済新聞社編

日本語の言葉の疑問点をあれこれと探して答えるという本はたくさんありますが、ちょっと奥深い内容になっている本のようでした。
心が折れる」という言葉は最近よく使われるようで、特に若い人の文章で見かけるようです。ルーツは1987年女子プロレス神取忍ジャッキー佐藤の試合のあとに神取が語った言葉にあるとか。その後スポーツ界に広く使われるようになったそうです。

「ちやほや」という言葉があり、おだてて機嫌をとり甘やかすという意味ですが、これは起源は平安時代にあり、「蝶よ花よと育てられ」の「蝶よ花よ」から来ているということです。たしかに音は似ていますが。

1月から3月までに生まれた人を「早生まれ」と言いますが、ちょっと考えると同じ学年の中でも一番最後に生まれた人たちなので「遅生まれ」じゃないのかと思った人も多かったのではないかと思います。しかし、これはあくまでも「数え年」が普通であった時代の感覚であり、正月に全員年を重ねる中で4月1日生まれまでは上の学年になるという意味で「早生まれ」だったそうです。
もちろんその当時からも「早生まれ」の人は同じ学年でも成長が遅れているために不利という感覚は今と同じだったようです。
なお、外国では9月新学年という方が一般的ですが、やはり8月生まれは成長の遅れがあり不利というのは各国共通で、わざと1年遅らせるという人もいるとか。

「捏造」という言葉も最近よく聞くようになってしまいましたが、「偽造」とは何が違うかという話題もありました。言葉の意味から行くと「捏造」とは「ないことをあるように偽ること」で、「偽造」とは「本物を真似て類似のものを作ること」だそうです。だからSTAP細胞は「捏造」なんです。

大相撲も開かれる両国国技館の所在地は墨田区横網だそうですが、ちょっと見ただけでは間違って覚えそうですが、これは「横網」(よこあみ)であって、「横綱」(よこづな)ではないそうです。横綱と間違える人が非常に多いそうです。
そもそも相撲が始まるはるか以前からある伝統的な地名であり、一度は改名の打診を受けたそうですが、地元はまったく取り合わずに話は消えたとか。

夏目漱石の「坊ちゃん」にはどうしても誤字としか思えないような漢字が使われていたということで、たとえばお金を「返す」と書くところを「帰す」と書いているところが何箇所もあるそうです。これが単なる間違いでないことはその使い方に明らかに差をつけていると見られるからで、どうも「帰す」という言葉を使った場合はその相手に対する思い入れが強いのではないかという推察です。
なお、別の場面では「娯楽」と書くべきところを「誤楽」と書いているのですが、これも登場人物の「赤シャツ」の娯楽に関してだけ使われており、赤シャツの行動を揶揄する意図があったようです。
しかし、これらの「誤字」はその後の編集で訂正されてしまい、現在の刊行版では改められてしまっているようです。作者の意図が変えられてしまっているのですが、それでよいのでしょうか。

結構、面白い例が多くこれまで知らなかったことを教えてくれました。