爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「㈱貧困大国アメリカ」堤未果著

著者の堤さんはアメリカの野村證券に勤務の時に911に遭遇し、その後ジャーナリストに転進されたと言う方です。
最近では多くの本を書いているようで、なかなかの人気ジャーナリストのようです。

この本も評判になったようですが、アメリカの各地を取材して1%の富裕者と多国籍企業がアメリカ社会全体を搾取する構造を作り上げている状況を明らかにしているというものです。
農家もほとんどが大企業の傘下に入るしかなく、そこでは雁字搦めに絡め取られて吸い取られる農奴のようなものになっているとか。
また、GM作物を使わざるを得ない状況を作り上げてしまい、そこからも抜け出せないという農民が世界各国に作られていくという種子支配の状況もあるようです。
公共サービスもどんどんと民間に売り渡され、消防や警察すら民間経営ということにもなっているようです。公教育も崩壊させられ、その代わりにチャータースクールと言う民間教育機関が作られているそうです。

このような大企業の戦略に政治も支配されていきます。今作られている政策というものもほとんどが企業のためになるように作られているもので、それを推進するための機関のようなものまでできているそうです。
しかし、選挙では共和党と民主党の争いと言う風にされていますが、これも結局はどちらも企業からの多額の献金により企業のための政治をやるように仕向けられている政党であり、それ以外の政党は閉め出されるような仕組みになっていてどっちもどっちの候補を選ばされているのがアメリカの選挙です。

こういった大企業、多国籍企業が世界的にも支配を強めようとしているのが現在の世界であるようです。

非常に怖ろしい時代であると考えさせられる内容でしたが、一つ気になるところがありました。
GM作物の健康被害について、それを告発するような研究をしても企業からの圧力や御用学者の反対で葬り去られるということを無批判に転載している点です。
この辺りの事情については以前から興味を持っていますが、被害を言い立てる研究者の方が恣意的でいい加減な研究をして発表し、自己宣伝をしているだけということがあるようで、こういった事例は信頼できる情報源でいくつか見ています。これを完全に信じ込んで書かれているようなこの本は大丈夫なのかと疑いを持ってしまいます。

もしかして、他の記載された点もそのような取材元の言ったことを書いただけということなのではないかと、引っかかるものになりました。