爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「スウェーデン民話名作集 Ⅳ」藪下紘一訳

著者は北欧の言語を研究してきた言語学者で、若い頃にスウェーデンを訪れ言葉の習得のための勉強をしたのですが、その時にストックホルムの書店で見つけたのが本書の原書だったそうです。

1600ページに16世紀からの民話が170話収められていたということで、このすべてを日本語訳してみようと徐々に取り組んだそうです。

20年近くの年月をかけて全訳を完成し出版にこぎつけました。本書はその4巻の中の1巻です。

 

一つ一つの話の紹介は略しますが、話の舞台は北欧だけではなくイタリアやフランスにも及んでおり、すでに近世に入っていた16世紀からの時代を感じさせます。

しかし、北欧の伝統的な魔物と思われる「トロール」と言うものも頻繁に登場しており、キリスト教伝播以前の古い話の影響もあるのではないかと思います。

 

また、ドイツのグリム童話などと同様ですが、非常に残酷な内容のものもあり、民話というものの後ろに隠された当時の庶民生活の厳しさもうかがえるものになっています。

 

なお、登場人物には王子や王女、騎士の他、船員も多数出てきており、すでにバイキングの時代ではなかったにしても海運に大きく依存していたスウェーデン社会と言うものの特色かもしれません。

 

北欧の古代神話というものはいくつか読んだことがありましたが、新しい時代のものは初めて読みました。現代に通じるものが多いのかもしれません。