合唱というのは日本の音楽の中でも大きな位置を占めています。最近ではバンドなどといった楽器を用いるものも相当な数の人が行うようになっていますが、昔は口さえ開けば参加できる合唱は気軽に楽しめるものでした。
実は私も住んでいる地元のアマチュアコーラスグループに参加しており、レベルは低いものの毎週練習に出かけ、時々は演奏会、発表会など出演しており、合唱というものの歴史も一度読んでおきたいと思っていましたので、この本は最適でした。
日本の合唱と言うものは国際的にも高水準であるのですが、その歴史ということになるとはっきりと分かっている人はあまりないようです。この辺は合唱というものがオーケストラなどと比べると軽視されてきたという楽壇の事情も関与しているということです。
日本において合唱と言うものが行われたのは、戦国時代末期にキリスト教布教のために来日した宣教師により始められたのが最初でしょうが、それはすぐに消え去りました。
実質的に今日まで継続する合唱史の最初はやはり明治になってからキリスト教会内でのことだったようです。
しかしその後すぐに学校教育での音楽の採用のなかで、唱歌が歌われる中で合唱と言うことも行われ始めました。
大正時代になると合唱団が続々と結成されプロも誕生し演奏活動をしていたそうです。
昭和になると戦時体制の中でも合唱と言うものを利用するということもあり、広がりました。山田耕作などの作曲家も合唱曲を手掛けるということもありました。
戦後になり、全日本合唱連盟と言う組織が結成され合唱コンクールの開催で愛好者も増えていきます。
ただし、それが一つの閉鎖社会のようになってしまいそこだけで完結したものになっていったとも言えます。これは吹奏楽も同様で、広い音楽界の中では特殊な社会であるのかもしれません。しかし、参加人数からいえばこちらの方が主流とも言えるかもしれません。
本書には1980年代が合唱の最後の輝きとされています。その後も続けられているものの、すでに曲がり角に来ているということでしょうか。
実は私が最初に合唱をやりだしたのも1980年代で素人ばかりの合唱団でした。そのころは参加者も多かったように思います。今年になって久しぶりに参加することになったのですが、昔と比べると熱気は少なくなっているのかもしれません。
その大きな流れがこの本で確認できました。