爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「江戸のことわざ」丹野顯著

すごいお名前の漢字の著者ですが「アキラ」と読むそうです。

それはともかく、

現在も「ことわざ」として使われているものの多くは江戸時代に成立したもののようです。しかも、そのうちの多くは「江戸」と言う地域でのもののようです。

そういった多くのことわざを江戸時代の風習との関係も含めてコンパクトに解説をしたという本です。

 

現代でも通用していることわざが多いのですが、中にはもはやほとんど使われていないものも紹介してあります。

例えば、「見かけばかりの空大名」というものは権威ばかりを見せつけた大名でもその内情は貧窮しているということを著しているものですが、さすがに使い道がなくなったのか消えてしまいました。

「吉原は女郎千人客一万人」「傾城の千枚起請」というのも実態が無くなってしまったのでしょう。

「際の商い後を詰める」というのは現在では解釈が難しく理解しにくいものになりました。当時は商売は掛けで行い、売掛金の回収は「際(きわ)」盆と暮れに行うという習慣でしたので、商売は「際」が肝心ということを表現したようです。

「正月三日、盆二日」というのも言葉は平易ですが現在はその実態が無くなっています。商家などへの奉公人は年に休みとしては正月に三日、盆に二日だけ貰えたということです。週休二日に有給休暇年20日と言う現在では想像しにくくなっています。

 

江戸時代とは異なる意味で使われることわざもあるようです。

「早寝早起き病知らず」現在では「三文の得」の方がポピュラーかもしれませんが、江戸時代では商人・農民・職人など「早起き」は当然ですが、「早寝」などは許されるものではありませんでした。寝る間も惜しんで夜なべで仕事をしなければならない場合が多かったようです。

「故郷に錦を飾る」ということも、江戸時代にはほとんど在り得なかった状況でした。故郷を離れて出世するという事態は商家勤めなどで希にあるのみで、多くの人は生国を離れることもできずに居たのが常だったようです。それでもこの言葉は一応江戸時代以前からあったようですが。

 

ことわざと言うものも一つ一つ深く考えてみると興味深いものかもしれません。