爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

安保法制法案成立

大きな反対の声にも関わらず安保法制は参議院でも可決成立する運びとなりました。

政権側の強い意志が初めから感じられ、是が非でも成立させるという姿勢は確固たるものでしたので、こうなることは予測はできましたが、多くの感慨を覚えます。

 

平和憲法の価値や集団的自衛権の問題など、法案の表面から見れば感じられるもの以外にも多くの問題点を露呈してくれました。

 

大きく見てまず最初に挙げなければならないのは「民主主義とは何か」です。

安倍総理は「民主主義のルールに従って最後は多数決だ」と発言しています。

しかし、識者の中には「少数意見の尊重を多数者が行うのが民主主義だ」と発言している人もいます。

おそらく理想を言えば識者の意見が正しいのでしょう。しかし安倍の解釈が普通なのでしょう。最悪だったのはそのような認識の者が総理となり圧倒的多数の議員を得たことです。そのためにやりたい放題ということになり、それが民主主義と広言させることになりました。

 

また「代議制民主主義」というものの問題点も大きく示してくれました。

古代の原始的民主制のように、一つ一つの問題が起こるたびに住民すべてが集まって決めるということが不可能なのは間違いないことですが、数年に一度の選挙で代議士を選びその政党が政治を行うという代議制というものの弱点を露呈しました。

前回、前々回の衆議院選挙では自民党は集票率よりはるかに多い議員数を得ました。(これ自体は小選挙区制の有害なところです。それは後で)しかし、一応は多数の有権者の支持を得たのですが、自民党候補者に投票したという有権者でも、今の安倍自民党政権を「安保法制」を決めるために選んだという意識の人がどれほどいることでしょうか。

さらにTPP問題に関していえば「反対」という「自民党候補者」を選んだという有権者が多いはずです。

原発再稼働も反対と言う人も多かったはずです。

しかし、その結果できた安倍内閣が何をやっているか。投票した人々の意識とはあくまでも「アベノミクスで景気回復」を望むというのがほとんどではないでしょうか。

この期待を大きく裏切り、形だけの経済政策をやりながら進めているのは総理自身のやりたいことだけです。

このように、政策一つ一つを取って見れば必ずしも賛成できないことを考えている候補者をそれでも選ばなければならないのが「代議制」というものです。これでいいのでしょうか。

 

その「小選挙区制」というものが政党、政治家というものを徐々に変質させてしまいました。

自民党の派閥というものも昔は批判もされていましたが、現在では見る影もありません。こうなったのも小選挙区制に移行したためです。

小選挙区制の選挙では政党に公認されない候補者はまず当選できません。それにさらに比例代表並立制なるおかしな制度で補強した現制度はさらに政党の統制が厳しくなっています。ほとんど議員の反抗はできないという状況であるのは小泉の郵政選挙で証明されました。

安保法制にもTPPにも内心反対の自民党議員も多いはずですが、それを口外することはできません。そのようなものが公党と言えるのでしょうか。しかもそれが政権党になっています。

小選挙区制採用の際には政権交代を可能にするということもお題目にされました。確かにそれが起こりましたが、それもかえって害ばかりが目立ちました。国民の声と言うものを真に大事にするのなら、完全大選挙区制(全国一区)でしょう。それが一番死に票がなくなります。

 

安保法制はすぐに害が出るということは無いかもしれません。しかし様々なことが徐々に起こってくるでしょう。反対のデモに集まった人々がこれからその気持ちを維持できるかどうか、そこに期待です。