爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「福島原発人災記 安全神話を騙った人々」川村湊著

文芸評論家で法政大学教授という著者ですが、東日本大震災の時には自宅(東京近郊?)にいて被害は無かったもののしばらく動きが取れなくなりました。
そこで、なんとかつながっていたネットを通じて原発に関する情報を探し、当時進行中であった福島第1原発の事故についていろいろと調べまわりました。
そして、なんと4月にはまとめて出版までしてしまったという大変な本です。
とはいえ、流れている情報をきちんとまとめるというところまでは行かなかったようですが、今となってはあまり残っていないものかもしれませんが、当時はまだ原発推進の諸情報がそのままネット上に残っていたようです。それを手当たり次第に集めて引用されています。

当時の原子力安全委員会の委員長(斑目という人だったそうです)が以前にどのような発言をし、どういった文章を残しているか、そしてそれが現在どのような言い訳をしているか。そういった例を他の人まで含めて数多く収集しています。原発推進派の人々の発言についてはできるだけカットすることなくそのまま引用しているので、もしかしたら著作権の問題が発生するかもと著者も書いていますが、文句があるなら言ってみろと啖呵を切っているような書き振りです。

その後、各所で批判されているように原発推進をしてきた人々(原子力村などと言われていますが)の以前の発言というのは、安全神話というものにどっぷりと浸かっていて、それが破綻した後では言い様もなくなったかと思いきや、まだそうでもないようです。
原発事故直後の混乱の中でこれだけの資料を集めて出版したと言うことは相当な労作かもしれませんが、その後の批判はきちんとまとまったものを読む方が分かりやすいようです。