爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ああ知らなんだ こんな世界史」清水義範著

作家の清水さんがたまたまトルコを旅行し、その魅力に取り付かれてその後イスラム教の諸国を毎年旅行するようになったのですが、行った先でいろいろな歴史遺物を見学してもほとんどその歴史を知らないと言うことに気付いてしまいました。
日本では世界史というとギリシア・ローマから西洋史だけを扱うような教育がされており、その他の地域の歴史がどのようなものかと言うことはほとんど知られていないようです。そこで、清水さんが訪れた国で見た歴史遺物にちなみそれがどのような歴史を物語っているかということを一般向けに書かれたものです。

まず、トルコですがここはイスラム教国ではありますが、そこに残されている遺跡はローマ時代のものが多く、先入観を裏切られたそうです。まあ知っていれば当然なんですが、ギリシア文化圏からローマの属国となり、東ローマ帝国の中心であったのですから。イスラム教が入ってきたのはそのはるか後、さらにトルコ人がやってきたのはさらに後の時代です。

マムルーク朝という王朝がありますが、これを奴隷王朝と訳されることもあります。しかし、イスラム世界にも多くの奴隷がいましたがこの場合のマムルークとはちょっと立場が違うようで、トルコ人やクルド人の傭兵であったようです。十字軍と戦ってゆうめいなサラディンクルド人であり、いわばこのマムルークに当たると言うことです。

インドのムガール帝国は16世紀頃に栄えましたが、その皇帝のシャー・ジャハーンが作らせたのがタージマハールです。愛する后のムムタージ・マハルのために作り、その隣に自分のための廟を作らせるつもりでしたが、息子に反乱を起こされて幽閉されたためにできませんでした。
その直後にイギリス人が占領したのですが、彼らはインド人がこのような美しい建物を建てたとは信じたくなかったのか、ヨーロッパ人がやってきて設計したと言う作り話を広めたそうです。いまだにヨーロッパの文献ではそのように書かれているものもあるとか。

私自身が地中海や中東などの歴史にも興味があるため、それほど本書の内容を「知らなんだ」ということもなかったのですが、普通の日本人(とたぶん欧米人)にとっては知らないことだらけなんでしょう。他にも各所にこのような歴史が残っていることでしょう。